
【論点】
人文科学の研究者が取り組んでいるシナジー・共生のテーマとして、コーパスや機械翻訳が知られている。しかし、基礎編でも説明したように、文理を調節するための組み合わせは、他にも色々ある。以下では、筆者が取り組んでいるマクロの文学分析について話を進めていく。
マクロの評価項目を地球規模とフォーマットのシフトにする。こうすると、どの系列に属していても溢れる人がいないからである。人文科学で地球規模といえば、東西南北にことばや文学を比較する研究が思い浮かぶであろう。また、縦に柱を作っていく実績だけだと、結局は文系脳とか理系脳になってしまう。そのため、共生を交えてフォーマットをシフトすることにより、文が主で理が副になるようなLのフォーマットを考える。人文科学以外の系列では、実務も交えてLのフォーマットが日常である。
人文科学は、個人が個人の研究をすればよいため、縦に柱を作る。共生に取り組むにしても、文理の間にTの逆さの認知科学を置いて、縦に3、4本柱を調節していく。しかし、そういうフォーマットでは、ブラックボックスを消すことができない。手つかずの系列がなくなるように、何か研究のポイントを探してフォーカスを置くとよい。そうすると、横のスライドがスムーズになり、シナジー・共生の組み合わせが増えてくる。
Tの逆さの認知科学の手法を崩して、縦に言語の認知を置いて、その出力が今度は入力になり、横に置く情報の認知を経て、何れかの数字や記号が出力となれば、Lのフォーマットができあがる。
以下で扱う論文は、基礎編と関連が取れるように、森鴎外の歴史小説群の中から誘発が強い作品(山椒大夫)と創発が強い作品(佐橋甚五郎)を題材にしている。それぞれLのフォーマットに乗るようにスーリーを作り、リレーショナルDBでそのポイントが説明できれば、一応の結論が得られるという流れである。
作家の執筆時の脳の活動を探るというシナジーのメタファーに興味関心がある方は、是非、自分が好きな小説を使って考えてもらいたい。読んで思うという受容の作業とは異なり、人の目には見えないものが見えてくるという効果が期待できるからである。
第一章は、2014年11月に南京農業大学で開催された中国日本語教学研究会江蘇分会で発表した研究内容であり、翌年に発行された論集に掲載された論文に加筆したものである。
第二章は、DBを作成してからデータを分析する際に、組み合わせのみならずバラツキについても考察することが普通であるとして、書いたものである。
一応、マクロの文学分析のためにサイクルを考えている。
①【地球規模】
東西南北に、ことばや文学を比較する。鴎外、魯迅、トーマス・マン、ナディン・ゴーディマ。
②【フォーマットのシフト1】
Tの逆さの認知科学を崩して、縦に言語の認知、横に情報の認知というLのフォーマットをイメージする。
③【フォーマットのシフト2】
Lのフォーマットのストーリーを作る。縦横の出力がそれぞれ組になるように調節する。
④【フォーマットのシフト3】
リレーショナルなDBを作成する。それぞれのカラムの説明が必要になる。作成後、組み合わせやバラツキについて考察する。
⑤ 再び①に戻る。
花村嘉英(2017)「日本語教育のためのプログラム」より
