
阿Qの人柄とこの作品に見られる言語特性をまとめておこう。郑择魁(1978)は、「阿Q正伝」の言語特性として①口語化(白話文)、②正確、鮮明、生き生き、③人物の高度な個性化、④ユーモア、からかい、婉曲表現、反語を挙げている。
① 毛沢東主席が「阿Q正伝」に言及したとき、通俗化と口語化を特に評価した(郑择魁:1978、66)。
② 肃然、赧然、凛然、悚然、欣然などの形容詞を用いて正確で生き生きと民衆の表情をはっきりと描いている(郑择魁:1978、67)。
③ 阿Qは70過ぎ(趙旦那の息子の曽祖父世代)、未荘村の地蔵堂に住む日雇い労働者。傘禿げを気にしている。辮髪は茶色。酒と煙草は嗜好品。自尊心が強い。
阿Qの勝利法:心の中で思っていることを後から口に出す。とりあえず都合よくものを考える。伝家の宝刀は忘却。気分屋。賭博の時は、一番声が大きい(郑择魁:1978、69)。
町へ行って金を稼いで戻ってきて、未荘村の人たちにその様子を語る。しかし、結局は、町で盗みのプロに手を貸すコソ泥に過ぎなかったことがわかる。
④ 阿Q自覚のなさを描きながら、彼を覚醒しようとしている。風刺の裏には作者の絶大なる熱情と希望が隠されている。
男女の掟に厳格であり、元来、真面目な人間。国家の興亡の責任は男にあるとする。(郑择魁:1978、72)。