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  • 莫言の「蛙」でシナジーのメタファーを考える11

    分析例

    1 万足の後妻の小狮子がまもなく出産するとした場面。
    2から5までは連想分析1-1と同じである。

    テキスト共生の公式

    ステップ1 意味1、2、3、4を合わせて、解析の組「計画出産と現実」を作る。
    ステップ2 姑姑の一徹から「正義と平等」という組を作り、解析の組と合わせる。

    A 1視覚+1喜+1計画出産あり+1直示という解析の組を、正義1あり+平等1ありという組と合わせる。
    B 3哀+1視覚+1計画出産あり+2隠喩という解析の組を、正義1あり+平等1ありという組と合わせる。
    C 3哀+1視覚+2計画出産あり+2隠喩という解析の組を、正義1あり+平等1ありという組と合わせる。  
    D 4楽+2聴覚+2計画出産あり+1直示という解析の組を、正義1あり+平等1ありという組と合わせる。 
    E 4楽+1視覚+1計画出産あり+2隠喩という解析の組を、正義1あり+平等1ありという組と合わせる。

    結果 表2については、テキスト共生の公式が適用される。

  • 莫言の「蛙」でシナジーのメタファーを考える10

    【連想分析2-1】

    表4 万足が愚昧を語る場面

    A 我眼含着泪说:姑姑,您别说了,我认识他...姑姑,谢谢您,我已经怀孕・・・小狮子:姑姑,这个孩子,很快就要降生了,他的爹是一个剧作家,他的妈妈是个退休的护士・・・
    意味1 1、意味2 1、意味3 1、意味4 1、正義1、平等1
    B 先生,我对您写这些,您会不会认为我是痴人写梦?我承认,姑姑的心理,确实发生了一些问题,我太太因为盼子心切,神经也有写不太正常,但我希望您能谅解她们,理解她们。
    意味1 3、意味2 1、意味3 1、意味4 2、正義1、平等1
    C 一个自认为有罪过的人,总要想办法宽慰自己,就像您熟知的鲁迅小说(祝福)中那个捐门榄的祥林嫂,清醒的人,不要点破她的虚妄,给她一点希望,让她能够解说,让她夜里不做噩梦,让他能够像个无罪感的人,一样话下去。
    意味1 3、意味2 1、意味3 2、意味4 2、正義1、平等1
    D 我顺从着她们,甚至也努力地去相信她们所相信的,应该是正确的选择吧。
    意味1 4、意味2 2、意味3 2、意味4 1、正義1、平等1
    E 嘲笑我,那些站在道德高地上的人会批判我,甚至会有个别有觉悟的人会像有关方面控告我,但我也不想改变,为了这个孩子,为了姑姑小狮子这两个从事过特殊工作的女人,我宁愿就这样愚昧下去。
    意味1 4、意味2 1、意味3 1、意味4 2、正義1、平等1

    花村嘉英(2020)「莫言の『蛙』でシナジーのメタファーを考える」より

  • 莫言の「蛙」でシナジーのメタファーを考える9

    表3 万足が姑姑に相談する場面

    表2Aと同文。情報の認知1 1、情報の認知2 2、情報の認知3 2
    表2Bと同文。情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 2
    表2Cと同文。情報の認知1 2、情報の認知2 1、情報の認知3 2
    表2Dと同文。情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 2
    表2Eと同文。情報の認知1 2、情報の認知2 2、情報の認知3 2

    A 情報の認知1は1ベースとプロファイル、情報の認知2は2新情報、情報の認知3は2問題未解決→推論である。
    B 情報の認知1は3条件反射、情報の認知2は2新情報、情報の認知3は2問題未解決→推論である。
    C 情報の認知1は2グループ化、情報の認知2は1旧情報、情報の認知3は2問題未解決→推論である。
    D 情報の認知1は3条件反射、情報の認知2は2新情報、情報の認知3は2問題未解決→推論である。 
    E 情報の認知1は2グループ化、情報の認知2は2新情報、情報の認知3は2問題未解決→推論である。

    結果 

     この場面は、万足の妻の出産に関する相談で、姑姑は、計画出産の順守を説く。彼女は、共産党員で計画出産委員会の副会長であり、万足の見解が立場に反するため、問題未解決→推論になる。故に、情報の認知3は、「正義と平等」という推論が続いている。

    花村嘉英(2020)「莫言の『蛙』でシナジーのメタファーを考える」より

  • 莫言の「蛙」でシナジーのメタファーを考える8

    【連想分析1-2】

    情報の認知1(感覚情報)
     
     感覚器官からの情報に注目することから、対象の捉え方が問題になる。また、記憶に基づく感情は、扁桃体と関係しているため、条件反射で無意識に素振りに出てしまう。このプロセルのカラムの特徴は、①ベースとプロファイル、②グループ化、③条件反射である。
     
    情報の認知2(記憶と学習)
     
     外部からの情報を既存の知識構造へ組み込む。この新しい知識はスキーマと呼ばれ、既存の情報と共通する特徴を持っている。未知の情報は、経験を通した学習となり、カテゴリー化される。このプロセルのカラムの特徴は、①旧情報、②新情報である。

    情報の認知3(計画、問題解決、推論)
     
     受け取った情報は、計画を立てるプロセスでも役に立つ。その際、目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。しかし、獲得した情報が完全でない場合は、推論が必要になる。このプロセルのカラムの特徴は、①計画→問題解決、②問題未解決→推論である。

    花村嘉英(2020)「莫言の『蛙』でシナジーのメタファーを考える」より

  • 莫言の「蛙」でシナジーのメタファーを考える7

    分析例

    1 妻の王仁美のお腹の子供のことで万足が姑姑に相談している場面。
    2 この小論では、「蛙」の購読脳を「計画出産と現実」、執筆脳を「正義と平等」と考えているため、意味3の思考の流れ、計画出産のありなしに注目する。
    3 現実を弁えた上で姑姑が万足に計画出産という国政の正しさを説明する。
    4 意味1 1視覚2聴覚3味覚4嗅覚5触覚、意味2 1喜2怒3哀4楽、意味3 計画出産1あり2なし、意味4振舞い 1直示2隠喩
    5 人工知脳(正義) 1ある2なし、人工知脳(平等) 1ある2なし

    テキスト共生の公式

    ステップ1 意味1、2、3、4を合わせて、解析の組「計画出産と現実」を作る。 
    ステップ2 姑姑の一徹から「正義と平等」という組を作り、解析の組と合わせる。

    A 1視覚+3哀+2計画出産なし+1直示という解析の組を、正義2なし+平等2なしという組と合わせる。
    B [1視覚+2聴覚]+2怒+1計画出産あり+1直示という解析の組を、正義1あり+平等1ありという組と合わせる。
    C 1視覚+2怒+5触覚+1計画出産あり+1直示という解析の組を、正義1あり+平等1ありという組と合わせる。 
    D 1視覚+3哀+2計画出産なし+1直示という解析の組を、正義2なし+2なしという組と合わせる。
    E 1視覚+2怒+1計画出産あり+2隠喩という解析の組を、正義1あり+平等1ありという組と合わせる。

    結果 表2については、テキスト共生の公式が適用される。

    花村嘉英(2020)「莫言の『蛙』でシナジーのメタファーを考える」より

  • 莫言の「蛙」でシナジーのメタファーを考える6

    4 分析

    【連想分析1-1】

    表2 万足が姑姑に相談する場面

    A 姑姑,要不就让她生了,我沮丧地说,党籍我不要了,职位我也不要...
    意味1 1、意味2 3、意味3 2、意味4 1、正義2、平等2
    B 姑姑猛拍桌子,震得我面前水杯中的水溅了出来。
    意味1 1+2、意味2 2、意味3 1、意味4 1、正義1、平等1
    C 你太没出息了!小跑!姑姑说,这不是你一个人的事!我们公社,连续三年没有一例超计划生育,难道你要给我们破例?
    意味1 1、意味2 2、意味3 1、意味4 1、正義1、平等1
    D 可她寻死觅话,我为难地说,要真弄出点事来可怎么办?
    意味1 1、意味2 3、意味3 2、意味4 1、正義2、平等2
    E 姑姑冷冷地说:你知道我们的土政策是怎么规定的吗?-喝毒药不夺瓶!想上吊给根绳。
    意味1 1、意味2 2、意味3 1、意味4 2、正義1、平等1

    花村嘉英(2020)「莫言の『蛙』でシナジーのメタファーを考える」より

  • 莫言の「蛙」でシナジーのメタファーを考える5

    3 データベースの作り方

     データベースの作成法について説明する。エクセルのデータについては、列の前半(文法1から意味5)が構文や意味の解析データ、後半(医学情報から人工知能)が理系に寄せる生成のデータである。一応、L(受容と共生)を反映している。データベースの数字は、登場人物を動かしながら考えている。
     こうしたデータベースを作る場合、共生のカラムの設定が難しい。受容はそれぞれの言語ごとに構文と意味を解析し、何かの組を作ればよい。しかし、共生は作家の知的財産に基づいた脳の活動が問題になるため、作家ごとにカラムが変わる。

    【データベースの作成】

    表1 「蛙」のデータベースのカラム

    文法1 態 能動、受動、使役。
    文法2 時制、相 現在、過去、未来、進行形、完了形。
    文法3 様相 可能、推量、義務、必然。
    意味1 五感 視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚。
    意味2 喜怒哀楽 情動との接点。瞬時の思い。
    意味3 思考の流れ 計画出産のありなし。
    意味4 振舞い ジェスチャー、身振り。直示と隠喩を考える。
    医学情報 病跡学との接点 受容と共生の接点。構文や意味の解析から得た組「計画出産と現実」と病跡学でリンクを張るためにメディカル情報を入れる。
    記憶 短期、作業記憶、長期(陳述と非陳述) 作品から読み取れる記憶を拾う。長期記憶は陳述と非陳述に分類される。
    情報の認知1 感覚情報の捉え方 感覚器官からの情報に注目するため、対象の捉え方が問題になる。例えば、ベースとプロファイルやグループ化または条件反射。
    情報の認知2 記憶と学習 外部からの情報を既存の知識構造に組み込む。その際、未知の情報についてはカテゴリー化する。学習につながるため。記憶の型として、短期、作業記憶、長期(陳述と非陳述)を考える。
    情報の認知3 計画、問題解決、推論 受け取った情報は、計画を立てるときにも役に立つ。目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。獲得した情報が完全でない場合、推論が必要になる。
    人工知能 正義 一筋に思い込んであくまで強情に押し通そうとする性質。
    人工知能 平等 自由の平等、社会経済の平等。

    花村嘉英(2020)「莫言の『蛙』でシナジーのメタファーを考える」より

  • 莫言の「蛙」でシナジーのメタファーを考える4

    2.2 愚昧と甘受

     愚昧は、愚かで道理がわからず、鋭敏さに欠け、滑稽なことをいう。一方、甘受とは、与えられたものをやむを得ないものとして逆らわずに受け入れることである。致し方ないともいえる。現状からの回避が困難で逃れようがなく受け入れざる負えない状況にある。万足と小狮子夫妻の代理出産に関する場面でこれらの違いを説明しよう。
     小狮子も姑姑も些か精神的に正常ではない。小狮子の側から見ると、もう年をとって自ら出産することはできないが、代理出産により子供を授かることは一理ある。しかし、闇の取引であり、若い女が子供を欲しがるような振舞いを見ると、愚かで滑稽な面がある。
     夫の万足から見るとどうであろうか。代理出産で親権を争い、裁判沙汰になっても譲ることなく赤ん坊を我が子として可愛く思う妻がいる。あれ程までに出産に関してうるさく口やかましくいってきた姑姑さえも一線を退いてからかつての面影はない。そうした状況で、万足としては、代理出産による赤ん坊を受け入れざる負えない立場にあり、甘受といえる。これにより子供を授かるという平等が実現され、法のレベルのみならず社会主義でいう平等に一応到達している。
     ストーリーをまとめるために、万足は、魯迅の「祝福」を例に引く。自ら罪を犯した人間は、己を慰めようとする。祥林嫂は、生涯を見れば幸不幸の連続である。奉公に出て給金を貰い結婚もし子供にも恵まれた。しかし、丈夫な亭主がチフスで亡くなり、門外で豆剥きをしていた子供が狼に食べられた。一寸闇に闇がある。  
     春に獣が出るとは知らずとか子供が生きていたらと皆が聞き飽きるほど繰り返す。心的外傷後ストレス障害(PTSD)である。そのため、罪悪感から落ち込み不安にかられる。罪滅ぼしのために土地の廟へ行き、入り口の閾を寄進し、一応罪の意識から解放される。しかし、風紀を乱したため雇い主から好かれることもない。冬至祭りでも仕事がなく失神して気力がなくなる。死後の魂や家族そして地獄を問う末期の血の気のない痩せた女が愚昧に加味されている。

    花村嘉英(2020)「莫言の『蛙』でシナジーのメタファーを考える」より

  • 莫言の「蛙」でシナジーのメタファーを考える3

     莫言(1955-)の「蛙」の購読脳を「計画出産と現実」にする。計画出産は、上述のように中国の国策である。正義または正義感は、平等であることをいう。資本主義であれば、確かに法のレベルで形式的に平等がある。一方、社会主義の場合は、平等が実現して初めて平等だと主張される。
     昔から不安な時代に自分自身がどのように人生の舵取りをするかというテーマは重要であった。先行きへの不安は確かなものであり、場合によって虚無的で無力にもなってしまう。そうなったとき自分が生き延びるために、リスクを最小に抑えた生活を送ったり、人生に迷う理由を他者の存在に委ねることで自己を肯定したりする。
     神島(2018)によると、正しい社会のあり方を追求する正義の理論は、自分と相手が合意可能な正義を求め、正しい社会の調節から個人に幸せが齎される。しかし、領域が拡大したら、正しい社会のあり方は、綿密に考察する必要がある。
     「蛙」の内容で見ると、不安な時代は、1949年に人民共和国が成立した当時の人口約5億4千万人から毎年急増した30年間であり、1981年には10億人を超えている。増加の一途を辿れば、国家破産というシナリオも考えられる。国家破産ともなれば、誰もが虚無で無力になってしまう。一方、増加を抑制できれば、リスクが回避され、他の項目、経済や技術の分野との相乗効果も期待できる。
     神島(2018)が説くアメリカの哲学者ジョン・ロールズ(1921-2002)は、正義の原理に二つのプリンシパルを持つ。一つは、基本的な自由の平等であり、また一つは、できうる限りの社会的で経済的な平等である。自由の平等は、自分と相手が合意可能な正義とし、正しい社会の調節を社会経済の平等と置き換えることも可能である。つまり、皆が満足するように調整できれば、ロールズの原理に近づいていく。そこで「蛙」の執筆脳は、「正義と平等」にする。
     正義に纏わる脳の活動は一徹である。一筋に思い込んであくまで強情に押し通そうとする性質または頭の使い様のことである。「蛙」の購読脳を「計画出産と現実」、執筆脳を「正義と平等」にすると、シナジーのメタファーは「莫言と正義」になる。これは、リスク回避にも繋がっていく。

    花村嘉英(2020)「莫言の『蛙』でシナジーのメタファーを考える」より

  • 莫言の「蛙」でシナジーのメタファーを考える2

    2 Lのストーリー 莫言と正義

     山東省にある片田舎の婦人科の女医が「蛙」の主人公である。彼女の名前は万心で、登場人物の名前が身体の部位や人体の器官から取られている。こうした風習は、母と繋がっているという意味であろうか。新中国成立後、1970年代に始まる政策の一つに出産の規制がある。吉田(2011)によると、この計画出産は、増加率が年20%を越えた人口問題に対応するための国策であり、30年の歳月を経て人口の増加はようやく鈍化した。
     出産の関連用語に堕胎がある。堕胎とは、生命のある胎児を自然の分娩期に先立って、人為的に母胎外に排出させることである。また、堕胎罪は、堕胎を実行することによって、成立する犯罪である。但し、優生保護法に基づく人工妊娠中絶などはこれに該当しない。人工妊娠中絶は、妊娠の持続が母体にとって危険である時などに、手術によって流産または早産させることである。
     「蛙」は、万足の最初の妻王仁美が密かに二人目を孕む場面や王胆が月足らずで陳眉を出産する場面、食用蛙の養殖工場の裏にある代理出産センターを舞台にした陳眉と小獅子による親権争いなど、出産に纏わる筋立てでストーリーが展開し、最後に代理ではあるが、小獅子と万足夫婦が子供を授かるところで終わる。
     この小論でLの信号の流れは、縦横何れも分析→直観→エキスパートとしたい。縦は、言語の認知により構文と意味の分析があり、横は、情報の認知による情報の捉え方や記憶そして問題解決・未解決の分析が来る。
     小説の問題解決の場面を対象にし、信号が問題解決に届いたら、その信号が体全体に回るかどうかを考える。感覚は、感覚器官や神経そして脳の連動から生まれるためである。

    花村嘉英(2020)「莫言の『蛙』でシナジーのメタファーを考える」より