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  • 国木田独歩の「武蔵野」で執筆脳を考える7

    【連想分析2】

    情報の認知1(感覚情報)
     
     感覚器官からの情報に注目することから、対象の捉え方が問題になる。また、記憶に基づく感情は、扁桃体と関係しているため、条件反射で無意識に素振りに出てしまう。このプロセルのカラムの特徴は、①ベースとプロファイル、②グループ化、③条件反射である。
     
    情報の認知2(記憶と学習)
     
     外部からの情報を既存の知識構造へ組み込む。この新しい知識はスキーマと呼ばれ、既存の情報と共通する特徴を持っている。未知の情報は、またカテゴリー化される。このプロセスは、経験を通した学習になる。このプロセルのカラムの特徴は、①旧情報、②新情報である。

    情報の認知3(計画、問題解決、推論)
     
     受け取った情報は、計画を立てるプロセスでも役に立つ。その際、目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。しかし、獲得した情報が完全でない場合は、推論が必要になる。このプロセルのカラムの特徴は、①計画から問題解決へ、②問題未解決から推論へである。

    花村嘉英(2020)「国木田独歩の『武蔵野』で執筆脳を考える」より

  • 国木田独歩の「武蔵野」で執筆脳を考える6

    分析例

    1 武蔵野の自然を廻る場面。 
    2 この小論では、「武蔵野」執筆時の国木田独歩の脳の活動を「イメージと同感」と考えているため、意味3の思考の流れ、誠実さのありなしに注目する。
    3 意味1 ①視覚②聴覚③味覚④嗅覚⑤触覚、意味2 ①喜②怒③哀④楽、意味3誠実さ①あり②なし、意味4振舞い ①直示②隠喩③記事なし
    4 人工知能 イメージ①あり②なし、同感①あり②なし 
     
    テキスト共生の公式

    ステップ1:意味1、2、3、4を合わせて解析の組「誠実さと想像力」を作る。
    ステップ2:誠実な精神状態から「イメージと同感」という組を作り、解析の組と合わせる。

    A:「①視覚+②聴覚」+④楽+①直示+②誠実さなしという解析の組を、イメージと同感からなる①イメージありと②同感なしという組と合わせる。 
    B:①視覚+④楽+①直示+②誠実さなしという解析の組を、イメージと同感からなる①イメージありと②同感なしという組と合わせる。
    C:①視覚+④楽+①直示+②誠実さなしという解析の組を、イメージと同感からなる①イメージありと②同感なしという組と合わせる。 
    D:①視覚+④楽+①直示+②誠実さなしという解析の組を、イメージと同感からなる①イメージありと②同感なしという組と合わせる。 
    E:①視覚+①喜+①直示+①誠実さありという解析の組を、イメージと同感からなる①イメージありと①同感ありという組と合わせる。 

    結果 表2については、テキスト共生の公式が適用される。

    花村嘉英(2020)「国木田独歩の『武蔵野』で執筆脳を考える」より

  • 国木田独歩の「武蔵野」で執筆脳を考える5

    【連想分析1】
    表2 受容と共生のイメージ合わせ 

    武蔵野の自然を廻る場面

    A 武蔵野に散歩する人は、道に迷うことを苦にしてはならない。どの路でも足の向くほうへゆけばかならずそこに見るべく、聞くべく、感ずべき獲物がある。武蔵野の美はただその縦横に通ずる数千条の路を当てもなく歩くことによって始めて獲えられる。意味1 1+2、意味2 4、意味3 1、意味4 1

    B 春、夏、秋、冬、朝、昼、夕、夜、月にも、雪にも、風にも、霧にも、霜にも、雨にも、時雨にも、ただこの路をぶらぶら歩いて思いつきしだいに右し左すれば、随処に吾らを満足さするものがある。
    意味1 1、意味2 4、意味3 1、意味4 1

    C これがじつにまた、武蔵野第一の特色だろうと自分はしみじみ感じている。武蔵野を除いて日本にこのような処がどこにあるか。北海道の原野にはむろんのこと、奈須野にもない、そのほかどこにあるか。林と野とがかくもよく入り乱れて、生活と自然とがこのように密接している処がどこにあるか。じつに武蔵野にかかる特殊の路のあるのはこのゆえである。意味1 1、意味2 4、意味3 1、意味4 1

    D されば君もし、一の小径を往き、たちまち三条に分かる処に出たなら困るに及ばない、君の杖を立ててその倒れたほうに往きたまえ。あるいはその路が君を小さな林に導く。林の中ごろに到ってまた二つに分かれたら、その小なる路を撰んでみたまえ。意味1 1、意味2 4、意味3 1、意味4 1

    E あるいはその路が君を妙な処に導く。これは林の奥の古い墓地で苔むす墓が四つ五つ並んでその前にすこしばかりの空地があって、その横のほうに女郎花など咲いていることもあろう。頭の上の梢こずえで小鳥が鳴いていたら君の幸福である。意味1 1、意味2 1、意味3 1、意味4 2

    花村嘉英(2020)「国木田独歩の『武蔵野』で執筆脳を考える」より

  • 国木田独歩の「武蔵野」で執筆脳を考える4

    3 データベースの作成・分析

     データベースの作成法について説明する。エクセルのデータについては、列の前半(文法1から意味5)が構文や意味の解析データ、後半(医学情報から人工知能)が理系に寄せる生成のデータである。一応、L(受容と共生)を反映している。データベースの数字は、登場人物を動かしながら考えている。
     こうしたデータベースを作る場合、共生のカラムの設定が難しい。受容はそれぞれの言語ごとに構文と意味の解析をし、何かの組を作ればよい。しかし、共生は作家の知的財産に基づいた脳の活動が問題になるため、作家ごとにカラムが変わる。

    【データベースの作成】

    表1 「武蔵野」のデータベースのカラム
    文法1 名詞の格 独歩の助詞の使い方を考える。
    文法2 態 能動、受動、使役。
    文法3 時制、相 現在、過去、未来、進行形、完了形。
    文法4 様相 可能、推量、義務、必然。
    意味1  五感 視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚。
    意味2 喜怒哀楽 情動との接点。瞬時の思い。
    意味3  思考の流れ 誠実さ、ありなし
    意味4 振舞い ジェスチャー、身振り。直示と隠喩を考える。
    意味5 数字 作品からとれる数字。
    医学情報 臨床、精神、看護、介護、薬 受容と共生の接点。構文や意味の解析から得た組「」と病跡学でリンクを張るためにメディカル情報を入れる。 
    情報の
    認知1 感覚情報の捉え方 感覚器官からの情報に注目するため、対象の捉え方が問題になる。例えば、ベースとプロファイルやグループ化または条件反射。
    情報の
    認知2 記憶と学習 外部からの情報を既存の知識構造に組み込む。その際、未知の情報についてはカテゴリー化する。学習につながるため。記憶の型として、短期、作業記憶、長期(陳述と非陳述)を考える。
    情報の
    認知3 計画、問題解決、推論 受け取った情報は、計画を立てるときにも役に立つ。目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。獲得した情報が完全でない場合、推論が必要になる。
    人工知能 エキスパートシステム イメージと同感 イメージありなし、同感ありなし。

    花村嘉英(2020)「国木田独歩の『武蔵野』で執筆脳を考える」より

  • 国木田独歩の「武蔵野」で執筆脳を考える3

     また、失業中の独歩が作家活動に再登場する際、驚きも必要であった。郷里を離れ都会での競争から故郷意識も生まれた。独歩は、生涯社会に関心があり、文学の手法は想像力を重んじ、作者の私にかかわる作品を正当とした。そこで、「武蔵野」の購読脳を「誠実さと想像力」にする。
     滝藤(2012)は、また、「武蔵野」が独歩自身を最も慰めてくれる自然の物語と位置づけ、言文一致の成功例でもあり、同じ気持ちを持つ人間たちに向けて語りかけているとする。そこで、「武蔵野」の執筆脳を「イメージと同感」と見なし、心の活動を脳の働きと考えた場合、シナジーのメタファーは、「国木田独歩と内面の写し絵としての思考」にする。課題や問題に対して生まれる一連の精神活動の流れで、周囲の状況に応じた現実的な判断や結論へと至っているためである。
     通常、五感情報の80%以上が視覚情報によるものである。片野(2018)によると、目で見たものは、物体から跳ね返ってくる光を受け取り物体の色や形、大きさ、立体感などを認識している。光は、角膜から眼球に入り、その量を調節する虹彩を経てさらに内側にある水晶体というレンズで屈折され、カメラのフィルムに当たる網膜で像になる。水晶体と網膜の間には、ゼリー状で透明な硝子体がある。網膜には光を感じ取る視細胞があり、光の刺激を電気信号に変える。さらに網膜から伸びた視神経の束がその信号を脳へ伝達する。
     網膜は、三層構造からなる。網膜に届いた光の刺激は、神経節細胞や双極細胞を通り三層目の桿体細胞と錐体細胞という視細胞で電気信号に変換される。そして今度は逆の方向に光が伝わり、神経節細胞から左右視交叉で情報が送られ、視床で整理された情報は、大脳皮質の視覚野で色、形、動きからそれが何か判断される。
    凝視により認識したものは、心の痛手を癒すという課題と相互に作用する。例えば、独歩がここで見たものは、物体から跳ね返ってくる光を受け取り物体の色や形、大きさ、立体感などの認識になっている。 

    花村嘉英(2020)「国木田独歩の『武蔵野』で執筆脳を考える」より

  • 国木田独歩の「武蔵野」で執筆脳を考える2

    2 「武蔵野」の思考によるLのストーリー  

     国木田独歩(1871-1908)は、父専八が裁判所書記官として山口県に赴任したため、多感な青年時代を山口で過ごした。滝藤(2012)によると、明治時代の青年に共通する政治や英雄を目標に掲げる生き方は、独歩にも見られた。しかし、精神的な革命が起こる。立身出世を夢見て上京しても開かれた将来が閉塞感に閉ざされもした。
     1891年(M24)1月、一番町の教会で洗礼を受けた。外を見ていた独歩の目が閉塞感から内に向かったためであり、出世争いが招く都会での孤独や不安を解消しようと、宗教や文学を救済とした。東京専門学校を中退し、一旦帰郷する。しかし、独歩は、田舎と都会、内と外、そして信仰と野心の間を振り子のように揺れ動いた。 
     1892年、再度上京し、洗礼を受けたこともあり、神を見続け、英雄に共通する誠実さを信仰の基本とした。その後の人生では、至福の時間の回復こそが理想となった。父の免職により、社会と関わるようになった独歩は、自由社記者、大分の田舎教師、海軍従軍記者と職歴を重ねるも、作家活動は失業中に行われたため、文学活動は揺れ動いた。
     確かに短編が多い作家である。滝藤(2012)は、作品中に誠実な眼で天地自然の存在を見出し、人物や自然に見る存在感を指摘している。また、人物描写は、明治時代に特有でしかも失意の人や慎ましい人に向けられた。文体は、言文一致の「武蔵野」でも誠実な自分が語り手のため、主観も客観も描写が可能であった。
     テーマで見ると、小民は、気持ちを落ち着かせるために必要であった。妻信子による離叛も影響がある。心の痛手を癒すために東京の郊外で過ごし、内面を持つ新しい個人の出現、独歩の内面の写し絵として武蔵野自然を使用した。

    花村嘉英(2020)「国木田独歩の『武蔵野』で執筆脳を考える」より

  • 国木田独歩の「武蔵野」で執筆脳を考える1

    1 先行研究
     
     文学分析は、通常、読者による購読脳が問題になる。一方、シナジーのメタファーは、作家の執筆脳を研究するためのマクロに通じる分析方法である。基本のパターンは、まず縦が購読脳で横が執筆脳になるLのイメージを作り、次に、各場面をLに読みながらデータベースを作成し全体を組の集合体にする。そして最後に、双方の脳の活動をマージするために、脳内の信号のパスを探す、若しくは、脳のエリアの機能を探す。これがミクロとマクロの中間にあるメゾのデータとなり、狭義の意味でシナジーのメタファーが作られる。この段階では、副専攻を増やすことが重要である。 
     執筆脳は、作者が自身で書いているという事実及び作者がメインで伝えようと思っていることに対する定番の読み及びそれに対する共生の読みと定義する。そのため、この小論では、トーマス・マン(1875-1955)、魯迅(1881-1936)、森鴎外(1862-1922)に関する執筆脳に関する私の著作を先行研究にする。また、これらの著作の中では、それぞれの作家の執筆脳として文体を取り上げ、とりわけ問題解決の場面を分析の対象にしている。さらに、マクロの分析について地球規模とフォーマットのシフトを意識してナディン・ゴーディマ(1923-2014)を加えると、“The Late Bourgeois World”執筆時の脳の活動が意欲と組になることを先行研究に入れておく。
     筆者の持ち場が言語学のため、購読脳の分析の際に、何かしらの言語分析を試みている。例えば、トーマス・マンには構文分析があり、魯迅にはことばの比較がある。そのため、全集の分析に拘る文学の研究者とは、分析のストーリーに違いがある。文学の研究者であれば、全集の中から一つだけシナジーのメタファーのために作品を選び、その理由を述べればよい。なお、Lのストーリーについては、人文と理系が交差するため、機械翻訳などで文体の違いを調節するトレーニングが推奨される。
     メゾのデータを束ねて何やら予測が立てば、言語分析や翻訳そして検定に基づくミクロと医学も含めた観察の社会論からなるマクロとを合わせて、広義の意味でシナジーのメタファーが作られる。

    花村嘉英(2020)「国木田独歩の『武蔵野』で執筆脳を考える」より

  • シナジーのメタファーのメリット

     作家の執筆脳を探るシナジーのメタファーの研究は、①Lのストーリーや②データベースの作成、さらに③論理計算や④統計処理が必要になる。しかし、最初のうちは、ある作品について全てを揃えることが難しいため、4つのうちとりあえず3つ(①、②、③または①、②、④)を条件にして、作家の執筆脳の研究をまとめるとよい。以下に、シナジーのメタファーのメリットをまとめておく。

    【メリット】

    ・作家の執筆脳を分析して組み合わせを作る際、定番の読みを再考する機会が得られる。
    ・定番の読みは、外国語の場合、客観的に読めているかどうかを確認するのに便利である。
    ・データベースの作成は、作品の重読と見なせるため、外国語の習得にも応用できる。理解できる言葉であれば、何語でもよい。
    ・データベースの作成が文献学だけでは見えないものを提供するため、客観性も上がり、研究者個人の発見に繋がる。
    ・その際、フロントのカラムだけではなく、セカンドのカラムも考えると分析が濃くなる。
    ・また、形態解析ソフトなど新たにインストールすることなく、マイクロソフトのWordやExcelで手軽に取り組むことができる。
    ・論理計算を習得すると、言語文学に関する認知科学の知識が増える。
    ・データ分析により平易な統計処理ができるようになる。
    ・作家違いでデータベース間のリンクが張れると、ネットワークによる相互依存関係も期待できる。
    ・バランスを取るために二個二個のルールが適用されれば、社会学の視点からマクロの研究に関するアイデアを育てることができる。
    ・人間の世界を理解するには、喩えだけでは物足りず、作家を一種の危機管理者または観察者と見なして、相互依存に基づいた人間の条件を理解することができる。
    ・作家の執筆脳は、世界中であまり研究対象になっていないため、研究に取り組めば、難易度の高い研究実績として評価が得られる。特に、自分自身の認知の柱を作成できるところがシナジーのメタファーの研究の面白いところである。
    ・ブログやホームページを公開する際、複数の言語を使用しながら、世界レベルの研究実績として紹介できる。

     例えば、シナジーのメタファーを外国語の習得に応用する際、エクセルファイルのカラムAに原文を順次入力していく。入力が終わったら、各行の原文を読みながら一行ずつ購読脳と執筆脳のカラムに数字を入れていく。これがリレーショナルとなり、単なる受容の読みとは異なるLの読みを提供するため、シナジーのメタファーを重読の一つに数えることができる。

     また、非言語情報のジェスチャーに、例えば、顔の部位の表情を加えると、脳の電気信号の流れをつかむための判断材料になり、セカンドのカラムも意義あるものとなる。

     今後は、作家の数を増やすことが課題になる。その際、バランスを意識して、東西南北とかオリンピックをイメージする。また、一作家の異なる小説間のリンクのみならず、作家違いでもデータベース間でリンクが張れると、予期せぬものが見えてくるため、シナジーのメタファーは分析力が上がっていく。文学をマクロに研究するには、やはり地球規模とフォーマットのシフトが必要十分な条件となる。

    花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーの作り方について」より

  • シナジーのトレーニング2

    C 分析の組

     さらに、テーマを分析するための組が必要である。例えば、ボトムアップとトップダウン、理論と実践、一般と特殊、言語情報と非言語情報、強と弱など。

    分析の組 ボトムアップとトップダウン 専門の詳細情報から概略的なものへ移行する方法。及び、全体を整える概略的な情報から詳細なものへ移行する方法。
    分析の組 理論と実践 すべての研究分野で取るべき分析方法。言語分析については、モンターギュの論理文法が理論で、翻訳のトレーニングが実践になる。
    分析の組 一般と特殊 小説を扱うときに、一般の読みと特殊な読みを想定する。前者は受容の読みであり、後者は共生の読みである。
    分析の組 言語情報と非言語情報 前者は言語により伝達される情報、後者は感情や思考や判断といった非言語情報である。
    分析の組 強と弱 組の構成要素は同じレベルでなくてもよい。両方とも強にすると、同じ組に固執するため、テーマを展開させにくくなる。

     このようにして組のアンサンブルを調節しながら、トーマス・マンの「魔の山」や魯迅の「狂人日記」及び「阿Q正伝」についてLのストーリーを作成した。

    花村嘉英「日本語教育のためのプログラム-中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで」より

  • シナジーのトレーニング1

     人文科学の人でもできるトレーニングとして組のアンサンブルを考える。シナジーという研究の対象は、元々が組からなっているためである。例えば、手のひらを閉じたり開いたりするのも、肘を伸ばしたり畳んだりするのも運動でいうシナジーである。Lのモデルができるだけ多くの組を処理できるように、シナジーの研究のトレーニングとして三つのステップを考える。

    A シナジーの組
     
     例えば、社会とシステム、法律と技術(特許)、経営工学、金融工学、ソフトウェアとハードウェア、心理と医学、法律と医学、文化と栄養そして文学と計算などがこのグループに入る。これらの中から何れかの組を選択して、テーマを作っていく。もちろんこれらの組について複数対応できることが望ましい。

    B テーマの組

     選んだ組からLに通じるテーマを作るには、人文科学と脳科学という組のみならず、ミクロとマクロ、対照の言語文学と比較の言語文学、東洋と西洋などの項目も必要になる。ここでミクロとは主の専門の研究を指し、マクロとはどの系列に属していても該当するように、地球規模とフォーマットのシフトを評価の項目とする。シナジーの研究は、バランスを維持することが大切である。<br> 「トーマス・マンとファジィ」は、ドイツ語と人工知能という組であり、「魯迅とカオス」は、中国語と記憶や精神病からなる組である。そこには洋学と漢学があり、また長編と短編という組もある。計算と文学のモデルは、こうした調整が土台になっている。

    テーマの組 文系と理系 小説を読みながら、文理のモデルを調節する。
    テーマの組 人文科学と社会科学 文献とデータの処理を調節する。
    テーマの組 語学文学(対照と比較)対照言語と比較言語の枠組みで小説を分析する。
    テーマの組 東洋と西洋 東洋と西洋の発想の違いを考える。例えば、東洋哲学と西洋哲学、国や地域における政治、法律、経済の違い、東洋医学と西洋医学。
    テーマの組 基礎と応用 まず、ある作家の作品を題材にしてLのモデルを作る。次に、他の作家のLのモデルと比較する。
    テーマの組 伝統の技と先端の技 人文科学の文献学とシナジーのストーリーを作るための文献学(テキスト共生)。ブラックボックスを消すために、テキスト共生の組を複数作る。
    テーマの組 ミクロとマクロ ミクロは主の専門の調節、マクロは複数の副専攻を交えた調整。縦に一つ(比較)、横にもう一つ取る(共生)。

    花村嘉英「日本語教育のためのプログラム-中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで」より