カイ二乗検定とは、カテゴリーデータを対象とし、期待値に対し実測値の編りを調べるために使用する検定方法である。実測値は、森鴎外の「山椒大夫」の一場面より作成した。期待値は、そこから一つ一つ計算している。
表1
そこでまた落ち葉の上にすわって、山でさえこんなに寒い、浜辺に行った姉さまは、さぞ潮風が寒かろうと、ひとり涙をこぼしていた。
日がよほど昇ってから、柴を背負って麓へ降りる、ほかの樵(きこり)が通りかかって、「お前も大夫のところの奴か、柴は日に何荷苅るのか」と問うた。
「日に三荷苅るはずの柴を、まだ少しも苅りませぬ」と厨子王は正直に言った。
「日に三荷の柴ならば、午(ひる)までに二荷苅るがいい。柴はこうして苅るものじゃ」樵は我が荷をおろして置いて、すぐに一荷苅ってくれた。
厨子王は気を取り直して、ようよう午までに一荷苅り、午からまた一荷苅った。
花村嘉英(2021)「森鴎外の『山椒大夫』でカイ二乗検定を考える」より