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  • 中島敦の「山月記」の執筆脳について-パーソナリティ障害6

    【分析例】
    意味1①喜②怒③哀④楽、意味2①視覚②聴覚③味覚④嗅覚⑤触覚、意味3振舞い①直示②隠喩、意味4思考①あり②なし、人工知能1人格障害①反応が範囲内②逸脱、人工知能2人格障害①調整あり②なし
    【テキスト共生の公式】
    ステップ1 解析の組は、自尊心(意味1、2、3)と自己愛性パーソナリティ障害(意味4)とする。
    ステップ2 人格障害の特性から「人生と思考」という組を作り、解析の組と合わせる。
    A 自尊心(③哀+②聴覚+①直示)と自己愛性パーソナリティ障害(①思考あり)という組を、人格障害の反応(①範囲内)と調整(①調整あり)からなる組と合わせる。
    B 自尊心(③哀+②聴覚+①直示)と自己愛性パーソナリティ障害(①思考あり)という組を、人格障害の反応(①範囲内)と調整(①調整あり)からなる組と合わせる。
    C 自尊心(③哀+②聴覚+②隠喩)と自己愛性パーソナリティ障害(①思考あり)という組を、人格障害の反応(①範囲内)と調整(①調整あり)からなる組と合わせる。
    D 自尊心(③哀+②聴覚+①直示)と自己愛性パーソナリティ障害(①思考あり)という組を、人格障害の反応(①範囲内)と調整(①調整あり)からなる組と合わせる。
    E 自尊心(③哀+②聴覚+②隠喩)と自己愛性パーソナリティ障害(①思考あり)という組を、人格障害の反応(①範囲内)と調整(①調整あり)からなる組と合わせる。
    【結果】
    表2については、テキスト共生が適用される。

    花村嘉英(2019)「中島敦の「山月記」の購読脳について」より

  • 中島敦の「山月記」の執筆脳について-パーソナリティ障害5

    【連想分析1】

    表2 受容と共生のイメージ合わせ

    A しかし、それは臆病な自尊心とでもいうべきものであった。己は詩によって名を成そうと思いながら、進んで師に就いたり、求めて詩友と交って切磋琢磨に努めたりすることをしなかった。かといって、又、己は俗物の間に伍することも潔よしとしなかった。 意味1 3 意味2 2 意味3 1 意味4 1 AI1 1 AI2 1

    B 共に、我が臆病な自尊心と、尊大な羞恥心とのせいである。己おのれの珠に非ることをおそれるが故ゆえに、敢て刻苦して磨こうともせず、又、己の珠なるべきを半ば信ずるが故に、碌々として瓦に伍することも出来なかった。 意味1 3 意味2 2 意味3 1 意味4 1 AI1 1 AI2 1

    C 己は次第に世と離れ、人と遠ざかり、憤悶と慙恚とによって益々己の内なる臆病な自尊心を飼いふとらせる結果になった。人間は誰でも猛獣使であり、その猛獣に当るのが、各人の性情だという。己おれの場合、この尊大な羞恥心が猛獣だった。虎だったのだ。 意味1 3 意味2 2 意味3 2 意味4 1 AI1 1 AI2 1

    D これが己を損い、妻子を苦しめ、友人を傷つけ、果ては、己の外形をかくの如く、内心にふさわしいものに変えて了ったのだ。今思えば、全く、己は、己の有っていた僅かばかりの才能を空費して了った訳だ。
    意味1 3 意味2 2 意味3 1 意味4 1 AI1 1 AI2 1

    E 人生は何事をも為さぬには余りに長いが、何事かを為すには余りに短いなどと口先ばかりの警句を弄しながら、事実は、才能の不足を暴露するかも知れないとの卑怯な危惧きぐと、刻苦を厭う怠惰とが己のすべてだったのだ。 意味1 3 意味2 2 意味3 2 意味4 1 AI1 1 AI2 1

    花村嘉英(2019)「中島敦の「山月記」の購読脳について」より

  • 中島敦の「山月記」の執筆脳について-パーソナリティ障害4

    【データベースの作成】

    表1 「山月記」のデータベースのカラム
    項目名   内容            説明
    ・文法1  名詞の格      中島敦の助詞の使い方を考える。
    ・文法2  ヴォイス      能動、受動、使役。
    ・文法3  テンス、アスペクト 現在、過去、未来、進行形、完了形。
    ・文法4  モダリティ    様相の表現。可能、推量、義務、必然。
    ・意味1  喜怒哀楽      情動との接点。瞬時の思い。
    ・意味2  五感        視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚。
    ・意味3  振舞い      ジェスチャー、身振り。直示と隠喩を考える。
    ・意味4 思考の流れ   課題や問題が与えられたとき生じる、一連の精神活動で、周囲の状況に応じた現実的な判断や結論。ある、なし。
    ・医学情報  病跡学との接点  受容と共生の共有点。構文や意味の解析から得た組「自尊心と自己愛性パーソナリティ障害」と病跡学でリンクを張るためにメディカル情報を入れる。
    ・記憶  短期、作業記憶、長期(陳述と非陳述) 作品から読み取れる記憶を拾う。長期記憶は陳述と非陳述に分類される。
    ・情報の認知1 感覚情報の捉え方 感覚器官からの情報に注目するため、対象の捉え方が問題になる。例えば、ベースとプロファイルやグループ化または条件反射。
    ・情報の認知2 記憶と学習 外部からの情報を既存の知識構造に組み込む。その際、未知の情報については カテゴリー化する。学習につながるため。記憶の型として、短期、作業記憶、長期(陳述と非陳述)を考える。
    ・情報の認知3 計画、問題解決、推論 受け取った情報は、計画を立てるときにも役に立つ。目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。獲得した情報が完全でない場合、推論が必要になる。
    ・人工知能 人格障害1 エキスパートシステム 極端な性格が周囲の人を困らせたり、本人が苦しんでいる 場合で、性格の特徴を問題視する人格(先天的な気質+後天的な性格)障害。反応が範囲内、逸脱。
    ・人工知能 人格障害2 エキスパートシステム 治療としては、話し合い、生活環境の調整。ある、なし。

    花村嘉英(2019)「中島敦の「山月記」の購読脳について」より

  • 中島敦の「山月記」の執筆脳について-パーソナリティ障害3

    3 データベースの作成・分析

     データベースの作成法について説明する。エクセルのデータについては、列の前半(文法1から意味5)が構文や意味の解析データ、後半(医学情報から人工知能)が理系に寄せる生成のデータである。一応、L(受容と共生)を反映している。データベースの数字は、登場人物を動かしながら考えている。
     こうしたデータベースを作る場合、共生のカラムの設定が難しい。受容は、それぞれの言語ごとに構文と意味を解析し、何かの組を作ればよい。しかし、共生は、作家の知的財産に基づいた脳の活動が問題になるため、作家ごとにカラムが変わる。

    花村嘉英(2019)「中島敦の「山月記」の購読脳について」より

  • 中島敦の「山月記」の執筆脳について-パーソナリティ障害2

    2 「山月記」の思考によるLのストーリー

    中島敦(1909-1942)は、1942年持病の喘息を抱えながら「山月記」を書き、同年この病が悪化しため、12月4日に33歳で死去する。「山月記」を読めば、誰もが人の人生について思わず考えさせられる。内容は、一連の精神活動の中で思考とつながるため、今回は「中島敦と思考」という組み合わせでシナジーのメタファーについて考察する。
     「山月記」の購読脳を「自尊心と自己愛性パーソナリティ障害」とする。自尊心については、主人公の李徴が認めている。日本成人病予防協会(2014)によると、人から称賛されたいと強く思い、根拠もないのに自分は称賛に値する優れた人間だと信じている。特権意識の強い、己惚れた人間である。自己愛を傷つけられると怒ることもある。この群に属するパーソナリティ障害には、反社会性、境界性、演技性といった基本的な特徴があり、他人を巻き込み派手で劇的な人格が見受けられる。
    購読脳の組み合せ、「自尊心と自己愛性パーソナリティ障害」という出力が、共生の読みの入力となって横にスライドし、出力として「人生と思考」という組を考える。よって「中島敦と思考」というシナジーのメタファーが成立する。
    リスク回避と取れる提言が述べられる。己惚れることなく協調性を持って生活することが人生の心得なのである。なお、パーソナリティ障害は、一般的に病気に対する自身の認識が低いため、治療に至らないことが多い。できるだけ周囲の人を通して調節するとよい。

    花村嘉英(2019)「中島敦の「山月記」の購読脳について」より

  • 中島敦の「山月記」の執筆脳について-パーソナリティ障害1

    1 先行研究

     文学分析は、通常、読者による購読脳が問題になる。一方、シナジーのメタファーは、作家の執筆脳を研究するためのマクロに通じる分析方法である。基本のパターンは、まず縦が購読脳で横が執筆脳になるLのイメージを作り、次に、各場面をLに読みながらデータベースを作成し、全体を組の集合体にする。そして最後に、双方の脳の活動をマージするために、脳内の信号のパスを探す、若しくは、脳のエリアの機能を探す。これがミクロとマクロの中間にあるメゾのデータとなり、狭義の意味でシナジーのメタファーが作られる。この段階では、副専攻を増やすことが重要である。 
     執筆脳は、作者が自身で書いているという事実及び作者がメインで伝えようと思っていることに対する定番の読み及びそれに対する共生の読みと定義する。そのため、この小論では、トーマス・マン(1875-1955)、魯迅(1881-1936)、森鴎外(1862-1922)の執筆脳に関する私の著作を先行研究にする。また、これらの著作の中では、それぞれの作家の執筆脳として文体を取り上げ、とりわけ問題解決の場面を分析の対象にしている。さらに、マクロの分析について地球規模とフォーマットのシフトを意識してナディン・ゴーディマ(1923-2014)を加えると、“The Late Bourgeois World”執筆時の脳の活動は、意欲と組になることを先行研究に入れておく。
     筆者の持ち場が言語学のため、購読脳の分析の際に、何かしらの言語分析を試みている。例えば、トーマス・マンには構文分析があり、魯迅にはことばの比較がある。そのため、全集の分析に拘る文学の研究者とは、分析のストーリーに違いがある。文学の研究者であれば、全集の中から一つだけシナジーのメタファーのために作品を選び、その理由を述べればよい。なお、Lのストーリーについては、人文と理系が交差するため、機械翻訳などで文体の違いを調節するトレーニングが推奨される。
     メゾのデータを束ねて何やら予測が立てば、言語分析や翻訳そして資格に基づくミクロと医学も含めたリスクや観察の社会論からなるマクロとを合わせて、広義の意味でシナジーのメタファーが作られる。

    花村嘉英(2019)「中島敦の「山月記」の購読脳について」より

  • 心理学統計の検定を用いて三浦綾子の「道ありき」を考える6

    3 まとめ

     三浦綾子の「道ありき」に登場する人物の満足度についてデータベースから心理学統計による評価をしてみると、満足度に関して差があることが分かった。

    参考文献

    大山正・中島義明 実験心理学への招待 サイエンス社 2012
    実吉綾子 心理学統計入門 技術評論社 2013
    花村嘉英 シナジーのメタファーの作り方-トーマス・マン、魯迅、森鴎外、ナディン・ゴーディマ、井上靖 中国日语教学研究会上海分会論文集 2018 
    花村嘉英 三浦綾子の「道ありき」の執筆脳について 2019
    三浦綾子 道ありき 新潮文庫 2004

  • 心理学統計の検定を用いて三浦綾子の「道ありき」を考える5

    表2 具体度

    言ってみれば、この世で望める限りの幸福を一心に集めていたわけだ。しかし彼は老人を見て、人間の衰えゆく姿を思い、葬式を見て、人の命の有限なることも思った。そしてある夜ひそかに、王宮も王子の地位も、美しい妻も子も棄てて、一人山の中に入ってしまった。→小さい満足1、小さい満足1 綾子1、前川1

    つまり釈迦は、今まで自分が幸福だと思っていたものに、むなしさだけを感じ取ってしまったのであろう。伝導の書といい、釈迦といい、そのそもそもの初めには虚無があったということに、わたしは宗教というものに共通する一つの姿を見た。→小さい満足1、小さい満足1 綾子1、前川1

    わたし自身、敗戦以来すっかり虚無的になっていたから、この発見はわたしに一つの転機をもたらした。→大きい満足2、小さい満足1 綾子2、前川1

    虚無は、この世のすべてのものを否定するむなしい考え方であり、ついには自分自身をも否定することになるわけだが、そこまで追いつめられた時に、何かが開けるということを伝導の書にわたしは感じた。→大きい満足2、弱い満足1 綾子2、前川1

    この伝導の書の終わりにあった、「何時の若き日に、何時の造り主をおぼえよ」の一言は、それ故にひどくわたしの心を打った。それ以来私たちの求道生活は、次第にまじめになっていった。→大きい満足2、小さい満足1 綾子2、前川1

    1 最初は男女の満足度に差がないと予測する。両者の平均値を取ると、綾子 1.5、前川 1.0になる。この差は誤差の可能性がある。
    2 具体度の1、2は独立変数であり、それにともなう満足度の大小は、従属変数になる。
    3 独立変数そのものの1、2が要因で、独立変数の実際の値、満足度が水準になる。
    4 ここでは、どちらの水準も同じ標本からデータを集めているため、具体度という要因は、参加者内要因になる。
    5 得られた有意確率(p値)を有意水準と比較する。危険率は通常5%未満のため、ここではt検定を採用する。 
    6 t検定では、二つの平均の差を表す統計量(t値)、データの規模を表す自由度(df)、p値(p-value)を説明する。
    [満足度のt検定]
    綾子 1.5、前川 1.0、よってt値=0.5。
    自由度は、独立した標本の個数から1引いたものである。よってdf=8。
    p値は、0.2にする。ここでは5%以上のため、帰無仮説を採択し、有意な差がないとする。

    花村嘉英(2019)「心理学統計の検定を用いて三浦綾子の『道ありき』を考える」

  • 心理学統計の検定を用いて三浦綾子の「道ありき」を考える4

    2.3 「道ありき」の登場人物に見る男女の満足度の違い

     「道ありき」は、作者自身の肺結核による闘病生活を愛や信仰を交えて綴った自叙伝である。ここでは、この小論の研究テーマ、男女の満足度の違いについて、作成したデータベースを基に考察していく。

    解答 男女の満足度の違い
    表1 具体度
    そんな思いがしきりにした。どうもウソッパチな姿に思えてならなかったのである。私が信者になったら、真実な祈りのできる、ほんとうの信者になろう、などとわたしは、傲慢な思いを持っていたのである。そしてその思いをわたしは、前川正にかくさず告げた。→小さい満足1、小さい満足1 綾子1、前川1

    彼は、「綾ちゃんは手厳しいな」
    そういうだけで、それ以上には何も言わなかった。「クリスチャンってなんとお人好しでしょう。信じていないもの同士が、神はある神はあるといいあって、お互いに安心しているんだもの」→小さい満足1、小さい満足1 綾子1、前川1

    ある時はそんなことも言った。前川正は、そんなわたしに聖書を開いて、伝導の書を嫁とすすめた。何の気なしに始めたこの伝導の書に、わたしはすっかり度肝を抜かれた。「伝道者曰く。空の空、空の空なるかな。すべて空なり。非の下に人の弄してなすところの諸々のはたらきは、そのミニなんの益あらん。世は去り世はきたる。地は永久に保つなり」→小さい満足1、小さい満足1 綾子1、前川1

    そこまでのわずかな一行半を読んだだけで、わたしの心はこの伝導の書にたちまちひきつけられてしまった。→大きい満足2、小さい満足1 綾子2、前川1

    「河はみな海に流れいる。海は満つることなし。目はみるに飽くことなく、耳は聞くに見つることなし・・。先になりしことは、また後に成るべし。非の下には新しきものあらざるなり。見よこれは新しきものと、指して言うべきものなるや。それはわれらの前に在りし世々に、すでに久しくありたるものなり・・前のもののことは、これをおぼゆることなし。後のもののこともまた後に出ずるものこれをおぼゆることあらじ」→大きい満足2、小さい満足1 綾子2、前川1

    花村嘉英(2019)「心理学統計の検定を用いて三浦綾子の『道ありき』を考える」

  • 心理学統計の検定を用いて三浦綾子の「道ありき」を考える3

    2.2    実験計画

    【研究テーマ】
    質問 男女で満足度の違い。
    帰無仮説 男女で満足度に差がない。
    対立仮説 男女で満足度に差がある。
    【実験計画】
    独立変数 実験や調査をする人が仮説を検証するために使用する変数。原因と結果でいうと原因である。
    従属変数 独立変数の操作に応じて変化すると考えられる変数。原因と結果でいうと結果である。
    【要因と水準】
    要因 実験者が使用する変数。独立変数そのもの。
    水準 実験者が使用する種類。独立変数が実際にとる値。
    【参加者間要因と参加者内要因】
    参加者間要因 水準のデータが異なる標本から集められる場合。
    参加者内要因 水準のデータが同じ標本から集められる場合。
    【有意確率】
     帰無仮説を前提としたときに、誤差から偶然ある程度の差が標本に生じる確率のこと。危険率とかP値という。また、誤差には、本当はないのに誤って誤差があるとする第一種と誤差があるのに誤ってないとする第二種とがある。実吉(2013)では、5%水準を基準にしている。

    花村嘉英(2019)「心理学統計の検定を用いて三浦綾子の『道ありき』を考える」