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  • アーネスト・ヘミングウェイの”The old man and the sea”「老人と海」で執筆脳を考える9

    4 まとめ

     ヘミングウェイの執筆時の脳の活動を調べるために、まず受容と共生からなるLのストーリーを文献から組み立てた。次に、「老人と海」のLのストーリーをデータベース化し、最後に文献で留めたところを実験で確認した。そのため、テキスト共生によるシナジーのメタファーについては、一応の研究成果が得られている。
     この種の実験をおよそ100人の作家で試みている。その際、日本人と外国人60人対40人、男女比4対1、ノーベル賞作家30人を目安に対照言語が独日であることから非英語の比較を意識してできるだけ日本語以外で英語が突出しないように心掛けている。 

    参考文献

    古平 隆 The old man and the sea その愛について 
    日本成人病予防協会監修 健康管理士一般指導員受験対策講座 テキスト3 ヘルスケア出版 2014 
    花村嘉英 計算文学入門-Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?新風舎 2005
    花村嘉英 森鴎外の「山椒大夫」のDB化とその分析 中国日语教学研究会江苏分会 2015
    花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品-魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社 2015
    花村嘉英 日语教育计划书-面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム-中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
    花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默 ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018
    花村嘉英 川端康成の「雪国」から見えてくるシナジーのメタファーとは-「無と創造」から「目的達成型の認知発達」へ 中国日语教学研究会論文集 2018
    花村嘉英 社会学の観点からマクロの文学を考察する-危機管理者としての作家について 中国日语教学研究会論文集 2020
    花村嘉英 三浦綾子の「道ありき」でうつ病から病跡学を考える 中国日语教学研究会論文集 2021
    花村嘉英 計算文学入門(改訂版)-シナジーのメタファーの原点を探る V2ソリューション 2022
    Ernest Hemingway The old man and the sea arrow books 2004
    Ernest Hemingway Wikipedia 
    ウィキペディア 老人と海

  • アーネスト・ヘミングウェイの”The old man and the sea”「老人と海」で執筆脳を考える8

    表3 情報の認知

    A 表2と同じ。情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 2
    B 表2と同じ。情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 1
    C 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 1
    D 表2と同じ。 情報の認知1 2、情報の認知2 2、情報の認知3 1
    E 表2と同じ。 情報の認知1 2、情報の認知2 2、情報の認知3 1

    A 情報の認知1は③その他の条件、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は②問題未解決から推論へである。
    B 情報の認知1は③その他の条件、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は①計画から問題解決へである。
    C 情報の認知1は③その他の条件、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は①計画から問題解決へである。
    D 情報の認知1は②グループ化、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は①計画から問題解決へである。
    E 情報の認知1は②グループ化、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は①計画から問題解決へである。   

    結果   
      
     この場面で老人は、サメの襲来である。老いて疲れていることもあり棍棒やオールで打って仕留めることはできない。しかし、できるだけ試みようと思っているため、購読脳の「海と戦う老人と海という好敵手」から作者の立場といえる「客観描写と調和」という執筆脳を引き出すことができる。 
     
    花村嘉英(2022)「アーネスト・ヘミングウェイの”The old man and the sea”「老人と海」で執筆脳を考える」より

  • アーネスト・ヘミングウェイの”The old man and the sea”「老人と海」で執筆脳を考える7

    【連想分析2】

    情報の認知1(感覚情報)  
     感覚器官からの情報に注目することから、対象の捉え方が問題になる。また、記憶に基づく感情は、扁桃体と関係しているため、条件反射で無意識に素振りに出てしまう。このプロセルのカラムの特徴は、①ベースとプロファイル、②グループ化、③その他の条件である。
     
    情報の認知2(記憶と学習)  
     外部からの情報を既存の知識構造へ組み込む。この新しい知識はスキーマと呼ばれ、既存の情報と共通する特徴を持っている。未知の情報は、またカテゴリー化される。このプロセスは、経験を通した学習になる。このプロセルのカラムの特徴は、①旧情報、②新情報である。

    情報の認知3(計画、問題解決、推論)  
     受け取った情報は、計画を立てるプロセスでも役に立つ。その際、目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。しかし、獲得した情報が完全でない場合は、推論が必要になる。このプロセルのカラムの特徴は、①計画から問題解決へ、②問題未解決から推論へである。

    花村嘉英(2022)「アーネスト・ヘミングウェイの”The old man and the sea”「老人と海」で執筆脳を考える」より

  • アーネスト・ヘミングウェイの”The old man and the sea”「老人と海」で執筆脳を考える6

    分析例

    1 老人がガラーノの接近に気がつく場面。
    2 この小論では、”The old man and the sea”の執筆脳を「客観描写と調和」と考えているため、意味3の思考の流れ、客観描写に注目する。  
    3 意味1①視覚②聴覚③味覚④嗅覚⑤触覚 、意味2 ①喜②怒③哀④楽、意味3客観描写①あり②なし、意味4振舞い ①直示②隠喩③記事なし。  
    4 人工知能 ①客観描写、②調和。 
     
    テキスト共生の公式   
     
    ステップ1 意味1、2、3、4を合わせて解析の組「海と戦う老人と海という好敵手」を作る。
    ステップ2 母親が学習時の娘の緊張に気がつくため、「客観描写と調和」という組を作り、解析の組と合わせる。  

    A [①視覚+⑤触]+③哀+②なし+①直示という解析の組を、①客観描写と②調和という組と合わせる。
    B ①視覚+③哀+①あり+①直示という解析の組を、①客観描写と②調和という組と合わせる。
    C ①視覚+③哀+①あり+①直示という解析の組を、①客観描写と②調和という組と合わせる。  
    D ①視覚+③哀+①あり+①直示という解析の組を、①客観描写と②調和という組と合わせる。
    E ①視覚+③哀+②なし+①直示という解析の組を、①客観描写と②調和という組と合わせる。    

    結果  表2については、テキスト共生の公式が適用される。

    花村嘉英(2022)「アーネスト・ヘミングウェイの”The old man and the sea”「老人と海」で執筆脳を考える」より

  • アーネスト・ヘミングウェイの”The old man and the sea”「老人と海」で執筆脳を考える5

    【連想分析1】

    表2 受容と共生のイメージ合わせ

    老人がガラーノの接近に気がつく場面。

    A Now they have beaten me, he thought. I am too old to club sharks to death. But I will try it as long as I have the oars and the short club and the tiller. 意味1 1+5、意味2 3、意味3 2、意味4 1、人工知能 2

    B He put his hands in the water again to soak them. It was getting late in the afternoon and he was nothing but the sea and the sky. There was more wind in the sky than there had been, and soon he hoped that he would see land. 意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能 1

    C 'You're tired, old man,’ he sad. ’You're tired inside.’ The sharks did not hit him again until just before sunset.
    意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能 1

    D The old man saw the brown fins coming along the wide trail the fish must make in the water. They were not even quartering on the scent. They were headed straight for the skiff swimming side by side.
    意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能 1

    E He jammed the tiller, made the sheet fast and reached under the stern for the club. It was an oar handle from a broken oar sawed off to about two and a half feet in length. He could only use it effectively with one hand because of the grip of the handle and he took good hold of it with his right hand, flexing his hand on it, as he watched the sharks come. They were both galanos. 意味1 1、意味2 3、意味3 2、意味4 1、人工知能

    花村嘉英(2022)「アーネスト・ヘミングウェイの”The old man and the sea”「老人と海」で執筆脳を考える」より

  • アーネスト・ヘミングウェイの”The old man and the sea”「老人と海」で執筆脳を考える4

    【データベースの作成】

    表1 ”The old man and the sea”のデータベースのカラム

    文法1 態 能動、受動、使役。
    文法2 時制、相  現在、過去、未来、進行形、完了形。
    文法3 様相 可能、推量、義務、必然。
    意味1 五感 視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚。
    意味2 喜怒哀楽 情動との接点。瞬時の思い。
    意味3 思考の流れ 客観描写ありなし。
    意味4 振舞い ジェスチャー、身振り。直示と隠喩を考える。
    医学情報 病跡学との接点 受容と共生の共有点。購読脳「海と戦う老人と海という好敵手」と病跡学でリンクを張るためにメディカル情報を入れる。  
    情報の認知1 感覚情報の捉え方 感覚器官からの情報に注目するため、対象の捉え方が問題になる。例えば、ベースとプロファイルやグループ化または条件反射。
    情報の認知2 記憶と学習 外部からの情報を既存の知識構造に組み込む。その際、未知の情報については、カテゴリー化する。学習につながるため。記憶の型として、短期、作業記憶、長期(陳述と非陳述)を考える。
    情報の認知3 計画、問題解決、推論 受け取った情報は、計画を立てるときにも役に立つ。目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。獲得した情報が完全でない場合、推論が必要になる。
    人工知能 客観描写と調和 エキスパートシステム 客観描写とは、作家が主観を表さず観察したままを描くこと。調和とは、うまくつり合い全体が整っていること。

    花村嘉英(2022)「アーネスト・ヘミングウェイの”The old man and the sea”「老人と海」で執筆脳を考える」より

  • アーネスト・ヘミングウェイの”The old man and the sea”「老人と海」で執筆脳を考える3

    3 分析

     データベースの作成方法について説明する。エクセルのデータについては、列の前半(文法1から意味5)が構文や意味の解析データ、後半(医学情報から人工知能)が理系に寄せる生成のデータである。一応、L(受容と共生)を反映している。データベースの数字は、登場人物を動かしながら考えている。
     こうしたデータベースを作る場合、共生のカラムの設定が難しい。受容は、それぞれの言語ごとに構文と意味の解析をし、何かの組を作ればよい。しかし、共生は、作家の知的財産に基づいた脳の活動が問題になるため、作家ごとにカラムが変わる。

    花村嘉英(2022)「アーネスト・ヘミングウェイの”The old man and the sea”「老人と海」で執筆脳を考える」より

  • アーネスト・ヘミングウェイの”The old man and the sea”「老人と海」で執筆脳を考える2

    2 Lのストーリー
     
     アーネスト・ヘミングウェイ(1899-1961)は、海を愛し生物を愛し偉大なる戦いを愛した作家である。彼の文体は、口語体の平易な英文であり20語前後の短文がandやbutでつながっていく。多様な形容詞は使わない。最後の作品「老人と海」は、傑作と評される。写実主義が持ち味で、そこにメンタルな要素が調和している。1952年「老人と海」を出版後、アフリカで二度の航空機事故に遭遇し、晩年はその後遺症により躁鬱による気分障害などの精神疾患があり、1961年7月散留弾で自殺した。
     「老人と海」の登場人物は、サンチャゴ老人とマノーリン少年、カジキ、サメ、トビウオ、ライオン、鳥といった魚や動物たちである。これらと対等にあるのは、空、雲、太陽、月、星といった宇宙の存在物である。海との戦いでは、海の生物の強さと美しさに圧倒されつつも、1500ポンドの重量があり長さが18フィートにも達する大魚(he was eighteen feet from nose to tail.)と戦ううちに親近感を覚え、自分を取り巻く存在物が友になる。 
     84日間魚が釣れず(he had gone eight-four days now without taking a fish.)、それでも諦めることなく大魚を一人で追いかける老人は、ヘミングウェイ分身ともいわれ、人間のあり方を教えてくれる。一人で舟に乗り沖に出て三日間に及ぶ大魚との戦いの後、まかじきの心臓から流れ出た大量の血が深海に潜むサメに察知される。帰港中二度も襲撃に見舞われる。最初はDentuso、二度目はGalanosである。デンツーソは、頭に銛を打ち込み退けたが、ガラーノは、銛もナイフも失くしたため、オールや棍棒のみで戦った。(I have the two oars and the tiller and the short club.)まかじきとの戦いに愛はある。しかし、サメとの戦いにはない。
     そして、老人は、骨だけになった大魚を持ち帰る。仕留めた獲物を無傷で持ち帰れなかったため負けてしまったというが、老人の仕事は漁村のメンバーに再評価され、少年に付き添われて満足して眠る。(he was still sleeping on his face and the boy was sitting by him watching him.)目的は達成された。
    そこで購読脳は「海と戦う老人と海という好敵手」、執筆脳は「客観描写と調和」、シナジーのメタファーは「ヘミングウェイとストイシズム」にする。

    花村嘉英(2022)「アーネスト・ヘミングウェイの”The old man and the sea”「老人と海」で執筆脳を考える」より

  • アーネスト・ヘミングウェイの”The old man and the sea”「老人と海」で執筆脳を考える1

    1 先行研究

     文学分析は、通常、読者による購読脳が問題になる。一方、シナジーのメタファーは、作家の執筆脳を研究するためのマクロに通じる分析方法である。基本のパターンは、まず縦が購読脳で横が執筆脳になるLのイメージを作り、次に、各場面をLに読みながらデータベースを作成し、全体を組の集合体にする。そして最後に、双方の脳の活動をマージするために、脳内の信号のパスを探す、若しくは、脳のエリアの機能を探す。これがミクロとマクロの中間にあるメゾのデータとなり、狭義の意味でシナジーのメタファーが作られる。この段階では、副専攻を増やすことが重要である。 
     執筆脳は、作者が自身で書いているという事実及び作者がメインで伝えようと思っていることに対する定番の読み及びそれに対する共生の読みと定義する。そのため、この小論では、トーマス・マン(1875-1955)、魯迅(1881-1936)、森鴎外(1862-1922)の私の著作を先行研究にする。また、これらの著作の中では、それぞれの作家の執筆脳として文体を取り上げ、とりわけ問題解決の場面を分析の対象にしている。さらに、マクロの分析について地球規模とフォーマットのシフトを意識してナディン・ゴーディマ(1923-2014)を加えると、“The Late Bourgeois World”執筆時の脳の活動が意欲と組になることを先行研究に入れておく。 
     筆者の持ち場が言語学のため、購読脳の分析の際に、何かしらの言語分析を試みている。例えば、トーマス・マンには構文分析があり、魯迅にはことばの比較がある。そのため、全集の分析に拘る文学の研究者とは、分析のストーリーに違いがある。文学の研究者であれば、全集の中から一つだけシナジーのメタファーのために作品を選び、その理由を述べればよい。なおLのストーリーについては、人文と理系が交差するため、機械翻訳などで文体の違いを調節するトレーニングが推奨される。

    花村嘉英(2022)「アーネスト・ヘミングウェイの”The old man and the sea”「老人と海」で執筆脳を考える」より

  • アナトール・フランスのCrainquebille(クランクビーユ)で執筆脳を考える9

    5 まとめ

     アナトール・フランスの執筆時の脳の活動を調べるために、まず受容と共生からなるLのストーリーを文献により組み立てた。次に、「クランクビーユ」のLのストーリーをデータベース化し、最後に文献で留めたところを実験で確認した。そのため、テキスト共生によるシナジーのメタファーについては、一応の研究成果が得られている。  
     この種の実験をおよそ100人の作家で試みている。その際、日本人と外国人60人対40人、男女比4対1、ノーベル賞作家30人を目安に対照言語が独日であることから非英語の比較を意識してできるだけ日本語以外で英語が突出しないように心掛けている。

    参考文献

    花村嘉英 計算文学入門-Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風舎 2005
    花村嘉英 森鴎外の「山椒大夫」のDB化とその分析 中国日语教学研究会江苏分会 2015
    花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品-魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社 2015
    花村嘉英 日语教育计划书-面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム-中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
    花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默 ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018
    花村嘉英 川端康成の「雪国」から見えてくるシナジーのメタファーとは-「無と創造」から「目的達成型の認知発達」へ 中国日语教学研究会上海分会 2018
    花村嘉英 計算文学入門(改訂版)-シナジーのメタファーの原点を探る V2ソリューション 2022
    Anator France Affaire Crainquebille(「クランクビーユ」山内義雄訳)Exporté de Wikisource 2014

    花村嘉英(2022)「アナトール・フランスの『クランクビーユ』で執筆脳を考える」より