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  • 「ヨセフとその兄弟」の「ヤコブ物語」から見えてくるファジィ測度について4

    2.2 ファジィ測度の具体例

     1種類の製品のみを作っている工場がある。 そこで働く従業員全員からなる集合をXとする。作業員の任意のグループA(⊂ X)をとり、Aのメンバーだけで作業するような状況を考える。Aのメンバーは、色々なやり方で作業ができる。例えば、分業や共同作業等。ここでは、最も効率のよいやり方で働くものと仮定する。その最も効率のよい方法でグループAが単時間(1時間)に作る製品の個数をμ(A)で表す。このμは、2x上の集合になる。 
     μはファジィ測度である。作業員がいないと製品ができないため、μ(∅)=0。そして、最も効率のよい方法で働くと仮定すれば、人数が増えると生産性が上がる(少なくとも下がらない)。即ち、A⊂B ⇒μ(A)≦ μ(B)である。

    花村嘉英(2019)「「ヨセフとその兄弟」の「ヤコブ物語」から見えてくるファジィ測度について」より

  • 「ヨセフとその兄弟」の「ヤコブ物語」から見えてくるファジィ測度について3

     しかし、ファジィ測度は加法性が仮定されていないため、A∩B = ∅ のときのμ(A∪B)とμ(A)+μ(B)の間の大小関係については、一意に定まらず、以下のような場合が想定される。

    (3) μ(A∪B)⋛ (A∪B)
     (3)については、3通リの解釈(4) 、(5) 、(6)が可能である。

    (4) μ(A∪B)>(A∪B)
     解釈AとBの間に相互(相乗)作用がある。

    (5) μ(A∪B)<(A∪B)
     解釈AとBは、μで測っている属性において重複を持つ(同じ特徴を持つ)。または、AとBの間に相殺作用がある。

    (6) μ(A∪B)=μ(A)+μ(B)
     解釈AとBは側率で相互作用はない。相乗作用と相殺作用が互いに打ち消し合っている。

     一般的に測度は、加法性が重要な特徴である。菅野(1993)によると、ファジィ測度は、非加法性による部分集合間の相互作用(要素の組み合わせによる効果)を表している。

    花村嘉英(2019)「「ヨセフとその兄弟」の「ヤコブ物語」から見えてくるファジィ測度について」より

  • 「ヨセフとその兄弟」の「ヤコブ物語」から見えてくるファジィ測度について2

    2 ファジィ測度

    2.1 一般の測度とファジィ測度の違い

     一般的にファジィ集合は、境界がぼやけた概念の曖昧さのことであり、ファジィ測度は、鮮明な境界内にある要素についてその可能性が特定できない曖昧さのことをいう。前者はベイグネス、後者はアンビグイティと呼ばれている。
     例えば、聖書の枠組みは変わらずとも、「ヤコブ物語」に登場するエサウやヤコブが聖書に登場するエサウやヤコブとどの程度近いのか、なかなか特定できない。こうしたファジィ測度を平易な論理計算を用いて説明していく。
     あるいは、聖書の中のエサウやヤコブと異なる記事もあるであろう。しかし、ファジィ測度を用いれば、そういう内容もやさしい論理計算に基づいて説明することできる。
     一般的に測度とは、長さ、面積、体積、質量などの外延量(広がりに規定される量)の数学的な表現である。一方、速度、濃度、密度などの量は、内包量と呼ばれる。例えば、AとBがそれぞれ1の仕事しかできないとしても、一緒に働くと2.5の仕事ができるような相乗効果がでる場合、

    (1) μ({a})= μ({b})= 1,
    (2) μ({a,b})= 2.5

    とファジィ測度で表現される。

    花村嘉英(2019)「「ヨセフとその兄弟」の「ヤコブ物語」から見えてくるファジィ測度について」より

  • 「ヨセフとその兄弟」の「ヤコブ物語」から見えてくるファジィ測度について1

    1 背景

     1924年に「魔の山」を出版し、1929年にノーベル賞を受賞したトーマス・マンは、1933年、ナチスドイツから亡命し、最初にフランス、スイス、1938年からはアメリカに移住した。戦時中は、祖国ドイツと対峙しつつ、15年余りの歳月をかけて、旧約聖書の創世記を題材にした物語「ヨセフとその兄弟」を執筆した。亡命作家としてドイツを外から見ていた時期で、その間トーマス・マンなりに幾度もドイツ国民に向けて警告を発している。勿論、当局から言動を追跡されていたため、ファジズムに対する警告の仕方として旧約聖書に基づいた創作という手法を取った。小説を読めばヨセフのような人物とその兄弟たちで新生ドイツを作っていこうというメッセージに取れる。
     この小論では、「ヤコブ物語」(1933)を題材にして、トーマス・マンとファジィ測度との整合性を考える。集合の枠組みが決まっていて、その中の要素が曖昧というファジィ測度の考え方は、枠組みが旧約聖書で、登場人物が聖書と些か異なる特徴を持つ「ヨセフとその兄弟」の登場人物についても、「トーマス・マンとファジィ」というシナジーのメタファーで説明することができる。
     この小論は、ファジィ集合の観点から考察した「計算文学入門-トーマス・マンのイロニーはファジィ集合といえるのか」(2005)および「計算文学入門(改訂版)-シナジーのメタファーの原点を探る」(2022)の中の「トーマス・マンとファジィ」というシナジーのメタファーの組み合わせを展開させ、かつ論理計算と統計からなる計算文学の手法を安定させる役割を担っている。シナジーのメタファーは、あくまで「トーマス・マンとファジィ」である。しかし、「ヨセフとその兄弟」の「ヤコブ物語」執筆時の脳の活動としてファジィを使う場合、「魔の山」のファジィ集合とは異なり、ファジィ測度が考察の対象になる。 

    花村嘉英(2019)「「ヨセフとその兄弟」の「ヤコブ物語」から見えてくるファジィ測度について」より

  • アンドレ・ジイドの「田園交響楽」で執筆脳を考える10

    5 まとめ   
     
     アンドレ・ジイドの執筆時の脳の活動を調べるために、まず受容と共生からなるLのストーリーを文献により組み立てた。次に、「田園交響楽」のLのストーリーをデータベース化し、最後に文献で留めたところを実験で確認した。そのため、テキスト共生によるシナジーのメタファーについては、一応の研究成果が得られている。  
     この種の実験をおよそ100人の作家で試みている。その際、日本人と外国人60人対40人、男女比4対1、ノーベル賞作家30人を目安に対照言語が独日であることから非英語の比較を意識してできるだけ日本語以外で英語が突出しないように心掛けている。

    参考文献

    花村嘉英 計算文学入門-Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?新風舎 2005
    花村嘉英 森鴎外の「山椒大夫」のDB化とその分析 中国日语教学研究会江苏分会 2015
    花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品-魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社 2015
    花村嘉英 日语教育计划书-面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム-中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
    花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默 ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018
    花村嘉英 川端康成の「雪国」から見えてくるシナジーのメタファーとは-「無と創造」から「目的達成型の認知発達」へ 中国日语教学研究会上海分会 2018
    花村嘉英 計算文学入門(改訂版)-シナジーのメタファーの原点を探る V2ソリューション 2022
    Andre Gide La symphonie pastorale(「田園交響曲」新庄嘉章訳) Wikisource 2023
    Andre Gide Wikipedia 

    花村嘉英(2024)「アンドレ・ジイドの『田園交響楽』で執筆脳を考える」より

  • アンドレ・ジイドの「田園交響楽」で執筆脳を考える9

    表3 情報の認知 
     
    同上      情報の認知1  情報の認知2  情報の認知3 
    A 表2と同じ。   2+3       1      2
    B 表2と同じ。   2+3      2       1
    C 表2と同じ。   3        1      1
    D 表2と同じ。   2+3      1     2
    E 表2と同じ。   3        2     1

    A 情報の認知1は[②グループ化+③その他の条件]、情報の認知2は①旧情報、情報の認知3は②問題未解決から推論へである。   
    B 情報の認知1は[②グループ化+③その他の条件]、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は①計画から問題解決へである。 
    C 情報の認知1は③その他の条件、情報の認知2は①旧情報、情報の認知3は①計画から問題解決へである。 
    D 情報の認知1は[②グループ化+③その他の条件]、情報の認知2は①旧情報、情報の認知3は②問題未解決から推論へである。 
    E 情報の認知1は③その他の条件、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は①計画から問題解決へである。 

    結果  
      この場面で盲人の生む子は盲目かという少女の問いかけに、息苦しさはあるも多感ゆえに安心させようときっぱり否定する。子供を作るには結婚する必要があると少女にいう。しかし、少女はそうは思わない。そこで人間や神の法則では禁じられていても自然の法則が許可してくれると説明するため、購読脳の「盲人教育と多感」から「聖書と制御」という執筆脳の組を引き出すことができる。  

    花村嘉英(2024)「アンドレ・ジイドの『田園交響楽』で執筆脳を考える」より

  • アンドレ・ジイドの「田園交響楽」で執筆脳を考える8

    【連想分析2】 
     
    情報の認知1(感覚情報)   
     感覚器官からの情報に注目することから、対象の捉え方が問題になる。また、記憶に基づく感情は、扁桃体と関係しているため、条件反射で無意識に素振りに出てしまう。このプロセルのカラムの特徴は、①ベースとプロファイル、②グループ化、③その他の条件である。 
      
    情報の認知2(記憶と学習)   
     外部からの情報を既存の知識構造へ組み込む。この新しい知識はスキーマと呼ばれ、既存の情報と共通する特徴を持っている。未知の情報は、またカテゴリー化される。このプロセスは、経験を通した学習になる。このプロセルのカラムの特徴は、①旧情報、②新情報である。 
     
    情報の認知3(計画、問題解決、推論)   
     受け取った情報は、計画を立てるプロセスでも役に立つ。その際、目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。しかし、獲得した情報が完全でない場合は、推論が必要になる。このプロセルのカラムの特徴は、①計画から問題解決へ、②問題未解決から推論へである。 

    花村嘉英(2024)「アンドレ・ジイドの『田園交響楽』で執筆脳を考える」より

  • アンドレ・ジイドの「田園交響楽」で執筆脳を考える7

    分析例 
     
    1 少女が盲人の生む子は盲目なのか問う場面。   
    2 本論文では、「田園交響楽」の執筆脳を「聖書と制御」と考えているため、意味3の思考の流れ、制御に注目する。    
    3 意味1①視覚②聴覚③嗅覚④触覚⑤味覚 、意味2 ①喜②怒③哀④楽、意味3制御①あり②なし、意味4振舞い ①直示②隠喩③記事なし。     
    4 人工知能 ①聖書1ある2なし、②制御1ある2なし。    
      
    テキスト共生の公式   
      
    ステップ1 意味1、2、3、4を合わせて解析の組「盲人教育と多感」を作る。 
    ステップ2 人間や神の法則では禁じられていても自然の法則が許可してくれると説明するため、「聖書と制御」という組を作り、解析の組と合わせる。    
     
    A [①視覚+②聴覚]+③哀+①あり+①直示という解析の組を、①聖書+②制御という組と合わせる。 
    B [①視覚+②聴覚]+③哀+①あり+①直示という解析の組を、①聖書+②制御という組と合わせる。 
    C [①視覚+②聴覚]+③哀+①あり+①直示という解析の組を、①聖書+②制御いう組と合わせる。  
    D [①視覚+②聴覚]+④楽+①あり+①直示という解析の組を、①聖書+②制御いう組と合わせる。 
    E [①視覚+②聴覚]+④楽+①あり+①直示という解析の組を、①聖書+②制御という組と合わせる。   
     
    結果  表2については、テキスト共生の公式が適用される。 
     
    花村嘉英(2024)「アンドレ・ジイドの『田園交響楽』で執筆脳を考える」より

  • アンドレ・ジイドの「田園交響楽」で執筆脳を考える6

    【連想分析1】 

    表2 受容と共生のイメージ合わせ 
     
     盲人の生む子は盲目なのか問う場面

    A Est-ce que les enfants d’une aveugle naissent aveugles nécessairement? Je ne sais qui de nous deux cette conversation oppressait davantage; mais à présent il nous fallait continuer.
    意味1 1+2、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能 2+1
    B Non, Gertrude, lui dis-je; à moins de cas très spéciaux. Il n’y a même aucune raison pour qu’ils le soient.
    意味1 1+2、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能 2+1

    C Elle parut extrêmement rassurée. J’aurais voulu lui demander à mon tour pourquoi elle me demandait cela; je n’en eus pas le courage et contibuai maladroitement:
    意味1 1+2、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能 2+1

    D Mais, Gertrude, pour avoir des enfants, il faut être mariée. Ne me dites pas cela, pasteur. Je sais que cela n’est pas vrai. 
    意味1 1+2、意味2 4、意味3 1、意味4 1、人工知能 2+1

    E Je t’ai dit ce qu’il était décent de te dire, protestai je. Mais en effet les lois de la nature permettent ce qu’interdisent les lois des hommes et de Dieu.
    意味1 1+2、意味2 4、意味3 1、意味4 1、人工知能 2+1

    花村嘉英(2024)「アンドレ・ジイドの『田園交響楽』で執筆脳を考える」より

  • アンドレ・ジイドの「田園交響楽」で執筆脳を考える5

    【データベースの作成】 
     
    表1 「田園交響楽」のデータベースのカラム 
     
    項目名  内容   説明 
    文法1  態     能動、受動、使役。 
    文法2  時制、相   現在、過去、未来、進行形、完了形。 
    文法3  様相   可能、推量、義務、必然。 
    意味1   五感   視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚。
    意味2   喜怒哀楽   情動との接点。瞬時の思い。 
    意味3   思考の流れ  制御ありなし   
    意味4  振舞い  ジェスチャー、身振り。直示と隠喩を考える。 
    医学情報  メンタルヘルス 受容と共生の接点。購読脳「盲人教育と多感」を共生にスライドさせるため、メディカル情報をここに置く。  
    情報の認知1  感覚情報の捉え方 感覚器官からの情報に注目するため、対象の捉え方が問題になる。例えば、ベースとプロファイルやグループ化または条件反射。 
    情報の認知2  記憶と学習  外部からの情報を既存の知識構造に組み込む。その際、未知の情報についてはカテゴリー化する。学習につながるため。記憶の型として、短期、作業記憶、長期(陳述と非陳述)を考える。 
    情報の認知3  計画、問題解決、推論  受け取った情報は、計画を立てるときにも役に立つ。目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。獲得した情報が完全でない場合、推論が必要になる。 
    人工知能 聖書と制御 エキスパートシステム  聖書とは、旧約聖書と新約聖書のこと。制御とは、目的に適うように調節すること。 

    花村嘉英(2024)「アンドレ・ジイドの『田園交響楽』で執筆脳を考える」より