森鴎外の「山椒大夫」のデータベース化とその分析2


 情動ついては、大脳の内側にある大脳辺縁系が密接な関係にある。特にその中でも扁桃体が重要であり、扁桃体と線維連絡のある視床下部や視床下部と線維連絡のある中脳中心灰白質も、情動の表出に関与している。例えば、情動に伴う自律神経系の反応(心拍数、呼吸、血圧の変化)や行動面での反応(恐怖に対するすくみや逃避、怒りによる攻撃)の生起である。つまり、扁桃体─視床下部─中脳中心灰白質という1つの系が情動に関与する脳の部位になる。(二木:1999)

 基礎編第二章の論文「読む・書く」で説明した【要約の手順】と照合してみる。
◇ 要約文を4段落(起承転結)で考える。①が起、②が承、③と④が転、⑤が結になる。
◇ 段落毎にキーワードを6、7個探す。①であれば、安寿と厨子王、由良の山椒大夫、奴婢、一緒に柴刈、一人で都を目指す、入水するにする。
◇ 段落毎に中心文を探す。①の中心文は、「姉は予め弟に二人では駄目だから、一人で筑紫の父の所へ行って、佐渡へ母を迎えに行くようにと話した」にする。
◇ 中心文を使用して、その段落を要約する。できるだけ5W1Hも考える。キーワードとキーワードを助詞や動詞で繋いでいく。
◇ テーマ・レーマも考慮すること。例えば、「一人で筑紫の父の所へ行って」が旧情報で、「厨子王は一人で都を目指す」が新情報。

誘発 

感情 ①平正氏の嫡子という身元が判明。(喜び)
行動 ①師実が厨子王に冠を加える。欲求を満たしてくれるものに接近する情動が厨子王に生まれる。
感情 ②父の安否を筑紫に尋ねると、死亡が確認される。(哀れ)
行動 ②身がやつれるほど嘆いた。身内との惜別による悔しい気持から哀れな情動が生まれる。
感情 ③二人はぴたりと抱き合った。(喜び)
行動 ③欲求を満たしてくれるものに接近する情動が母と正道に生じる。

尊敬の念

感情 ①正道(厨子王)が丹後の国守になる。(責任感)
行動 ①律師は総都にし安寿のために尼寺を建て母を探しに佐渡へ行く。母と姉への献身である。

花村嘉英著「日本語教育のためのプログラム-中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで」より


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