2.2 標準偏差による分析
グループA、グループB、グループC、グループDそれぞれの標準偏差を計算する。その際、場面1、場面2、場面3の特性1と特性2のそれぞれの値は、質量ではなく指標であるため、特性の個数を数えて算術平均を出し、それぞれの値から算術平均を引き、その2乗の和集合の平均を求め、これを平方に開いていく。
求められた各グループの標準偏差の数字は、何を表しているのだろうか。数字の意味が説明できれば、分析は、一応の成果が得られたことになる。
◆グループA:五感(1視覚と2その他)
場面1(特性1、5と特性2、0)の標準偏差は、0となる。
場面2(特性1、5と特性2、0)の標準偏差は、0となる。
場面3(特性1、4と特性2、1)の標準偏差は、0.4となる。
【数字からわかること】
場面1、場面2、場面3を通して、視覚情報が多いため、「雪国」は、五感の中で視覚情報が鍵になる作品といえる。
◆グループB:ジェスチャー(1直示と2隠喩)
場面1(特性1、3と特性2、2)の標準偏差は、0.49となる。
場面2(特性1、2と特性2、3)の標準偏差は、0.49となる。
場面3(特性1、4と特性2、1)の標準偏差は、0.4となる。
【数字からわかること】
「雪国」は、当時の世相を反映させた作品のため、場面1、場面2、場面3を通して、隠喩が少ないことがわかる。
◆グループC:情報の認知プロセス(1旧情報と2新情報)
場面1(特性1、2と特性2、3)の標準偏差は、0.49となる。
場面2(特性1、2と特性2、3)の標準偏差は、0.49となる。
場面3(特性1、0と特性2、5)の標準偏差は、0となる。
【数字からわかること】
場面1、場面2、場面3を通して、新情報の2が多いため、ストーリーがテンポよく展開していることがわかる。
◆グループD:情報の認知プロセス(1問題解決と2未解決)
場面1(特性1、1と特性2、4)の標準偏差は、0.4となる。
場面2(特性1、0と特性2、5)の標準偏差は、0となる。
場面3(特性1、1と特性2、4)の標準偏差は、0.4となる。
【数字からわかること】
「雪国」は、戦中戦後の日本の一つのストーリーを反映した作品のため、場面1、場面2、場面3を通して、問題未解決が多いことがわかる。
花村嘉英(2018)「川端康成の『雪国』のバラツキについて」より