モンタギュー文法からGPSGへ-イディオムの構成性をめぐるモデル理論の修正3


2.2 GPSGの統語規則 

 GPSGの統語部門は、表示レベルを単層で扱える一応均一な文脈自由の句構造文法(Phrase Structure Grammar: PSG)になっている。X-バー理論の手法を継承してはいるが、カテゴリーに関しては、原始的な記号(S、N、V・・・)ではなく、素性と素性値の束からなるという考えをさらに進めて、それらの依存性(素性共起制限Feature Co-occurrence Restriction: FCR)やそれらの通常値(素性値指定黙約 Feature Specification Defaults: FSD)をも指定している。* 
 PSGに関しては、親と娘の直接支配関係と娘間の線的順序に関する情報も二分され、前者は、ID(Immediate Dominance)規則、後者は、LP(Linear Precedence)規則になりうる。* ID規則は、さらにメタ規則により新たにID規則にもなりうる。* ID規則内では統語素性が受け渡されるが、その際の制約として足素性原理(Foot Feature Principle: FFP)、制御一致原理(Control Agreement Principle: CAP)、主要部素性原理(Head Feature Structure: HFC)が設定されている。*これらの規則や制約が複合体をなして部分木を認可する役割を果たしている。

花村嘉英(2022)「モンタギュー文法からGPSGへ-イディオムの構成性をめぐるモデル理論の修正」より 


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