ビジネス日本語の攻略法6


3 実務翻訳の和訳からのアプローチ

3.1 実務の件例

 翻訳の仕事は、ドイツから帰国した後、つまり36歳のときから始めた。はじめは電気メーカーでソフトウェア関連の英日翻訳のチェッカーをしていた。理系の資料は、何れにしても英語が中心であるため、その後も複数の会社で英語の資料を日本語に翻訳していた。その間、自分の専門であるドイツ語についても時間を見つけて技術文のトレーニングを重ね、次第に機械翻訳へと進んでいった。

 ドイツのチュービンゲン大学で研究していたモンターギュ文法は、機械翻訳の素といえる言語理論で、チョムスキーの生成文法と共にGPSG(一般化句構造文法)の重要な構成要素となっている。その後、カンプらが開発を進める談話表示理論へと展開し、特に主要部の駆動に特徴がるHPSG(主要部駆動句構造文法)でも状況意味論として論理文法の流れを形成している。

 機械翻訳のソフトは、例えば、Tradosを使用して、ソフトウェアの独日翻訳をしながらメモリーを作成したり、翻訳エディターを使用して独日特許翻訳の実績を作ったりした。また、電機メーカーで英語の契約書のチェックをしたこともあり、ドイツ語の契約書を和訳したこともある。いずれにせよ、会社では英日翻訳、在宅で独日翻訳に従事し、日々や休むことなく仕事をしていた。

 ビジネス日本語を攻略するための私自身の工夫について説明しよう。翻訳の作業単位は、外国語と系列の専門知識が組になっている。英語やドイツ語と情報、英語やドイツ語とバイオやメディカル、そして英語、ドイツ語、中国語と契約書といった具合に作業単位を調節している。

 その折、実務を通してエクセルに各系列の用語集を作成しながら、専門用語を覚えるようにしている。または、各系列の専門辞典を日々参考書として使用する。また、一読で分かる翻訳データを作るために、翻訳ソフトでは、メモリーに基づいて翻訳、校正をする。文体の調節ができるようになれば、一応、翻訳のプロとして通用するであろう。文体論を文学のみならず、翻訳という広範囲にわたる文献学に拡張できれば、ことばに偏りがちな翻訳作業も、内容面から考えることができるようになる。専門、非専門を問わず、系列違いで異なる日本語の文体が処理できるようになれば、翻訳が専門となっていく。そこで、文体論について見ていこう。

花村嘉英(2018)「ビジネス日本語の攻略法」より

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