【連想分析1】
表2 受容と共生のイメージ合わせ
武蔵野の自然を廻る場面
A 武蔵野に散歩する人は、道に迷うことを苦にしてはならない。どの路でも足の向くほうへゆけばかならずそこに見るべく、聞くべく、感ずべき獲物がある。武蔵野の美はただその縦横に通ずる数千条の路を当てもなく歩くことによって始めて獲えられる。意味1 1+2、意味2 4、意味3 1、意味4 1
B 春、夏、秋、冬、朝、昼、夕、夜、月にも、雪にも、風にも、霧にも、霜にも、雨にも、時雨にも、ただこの路をぶらぶら歩いて思いつきしだいに右し左すれば、随処に吾らを満足さするものがある。
意味1 1、意味2 4、意味3 1、意味4 1
C これがじつにまた、武蔵野第一の特色だろうと自分はしみじみ感じている。武蔵野を除いて日本にこのような処がどこにあるか。北海道の原野にはむろんのこと、奈須野にもない、そのほかどこにあるか。林と野とがかくもよく入り乱れて、生活と自然とがこのように密接している処がどこにあるか。じつに武蔵野にかかる特殊の路のあるのはこのゆえである。意味1 1、意味2 4、意味3 1、意味4 1
D されば君もし、一の小径を往き、たちまち三条に分かる処に出たなら困るに及ばない、君の杖を立ててその倒れたほうに往きたまえ。あるいはその路が君を小さな林に導く。林の中ごろに到ってまた二つに分かれたら、その小なる路を撰んでみたまえ。意味1 1、意味2 4、意味3 1、意味4 1
E あるいはその路が君を妙な処に導く。これは林の奥の古い墓地で苔むす墓が四つ五つ並んでその前にすこしばかりの空地があって、その横のほうに女郎花など咲いていることもあろう。頭の上の梢こずえで小鳥が鳴いていたら君の幸福である。意味1 1、意味2 1、意味3 1、意味4 2
花村嘉英(2020)「国木田独歩の『武蔵野』の執筆脳について」より