HPSGをツールとした他のイディオム分析にErbach and Krenn (1993)がある。コロケーション*を前提にイディオムが議論されており、特にKapitel 2「量化の内容」の中で記述した数量詞継承原理(Quantifier Inheritance Principle(QIP)(5))がイディオム分析の鍵になっている。まず、全体の表現の特性と見なされるイディオム(a)は、分析不能(unanalyzable)として分類され、一方、 部分的な修飾や指示的な使用が可能なためイディオムの一部に意味が割り当てられるべきもの(b)は、隠喩的(metaphoric)として分類されている。
(a) den Löffel abgeben.(さじを投げる、つまり、あきらめる)
(b) in den Sauce Apfel beißen.(嫌な仕事をする)
(a)は、直接意味が割り当てられていて、(b)は、「嫌な仕事」 とden Sauce Apfel(アップルソース)間および「行う」とbeißen(噛む)の間にある種の連結を作ることで理解される。
花村嘉英(2022)「イディオム-MGからGPSGそしてHPSGへ」より