宮本百合子の「播州平野」で執筆脳を考える2


2 「播州平野」のLのストーリー 

 1945年8月15日、ポツダム宣言を受諾した日本の無条件降伏により第二次世界大戦が終結した。この日の正午に重大放送があった。日本の降伏は、宮本百合子(1899-1951)の作家としての精神と肉体を封じ込めていた堰を突破させた。
 小田切(1977)によると、「播州平野」の主題は、治安維持法と戦争により傷ついた理性と善意のためにあり、壊れた人間性の恢復と未来の勝利のためにどうしても書きたかったテーマであった。 
 ひろ子は、夫重吉のいる網走に行こうと思った。しかし、前日まで休暇で戻っていた重吉の弟の直治が被爆した。生死不明もありひろ子は広島に向かう。東京から西へ向かう汽車から戦争の悲惨さや規模、荒れ果てた焼け跡、人々の表情が見て取れる。日本の古い力が崩れていく一方で、新たに動き出した日本の展望も見うけられる。 
 網走から戻った重吉と二人で暮らすようになったひろ子は、苦難に耐え鍛え抜かれた魂で夫と共に労わりながら戦後の新しい活動のなかへ身を置く。小田切(1977)は、宮本百合子の文学が強固な意思、博愛や情熱そして戦いを介して日本文学になかった日本と日本人の新たな追求を示していると説く。 
 そこで、「播州平野」の購読脳は、「壊れた人間性の恢復と未来の勝利」にし、それまでにない試みとして日本の歴史の胎動を描いているため、執筆脳は「意思と追及」にする。「播州平野」のシナジーのメタファーは、「宮本百合子と戦いの魅力」である。 

花村嘉英(2020)「宮本百合子の『播州平野』の執筆脳について」より

シナジーのメタファー3


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