この小論は、これまで留学や仕事で滞在したことがあるドイツと中国を中心に日本を交えた異文化コミュニケーションについて考えていく。内容は、2009年11月に武漢科学技術大学外語外事職業学院で行った学生向けの講演をまとめて書き直したものである。
1.中国と日本の共通点
【漢字の起源】
最初に漢字の起源について見ていこう。河南省で出土した占いに使う亀の甲や獣骨の文字(紀元前1500年頃)が最古といわれている。その後、紀元前3世紀に秦の始皇帝が書体、篆書体を制定し、印鑑の字体などに使用されて実用化された。前漢(紀元前206-紀元後8)の時代に隷書体が作られ、後漢(25-220)末に楷書体に代わり、現在に至っている。
印鑑の字体(印篆)は、秦の始皇帝が紀元前221年に天下を統一した際に作られた篆書体をもとにしている。秦や漢の時代からすでに官職には欠かせないものであった。字入れの際は、画数や運気を織り込みながら、八方に広がるように彫っていく。
漢字の伝来は論語からといわれていて、朝鮮半島を経て遅くとも3世紀には伝わっていた。
古墳時代(3世紀-5世紀)には大和朝廷が350年頃全国を統一し、飛鳥時代(592-710)には、聖徳太子(574-622)が701年に大宝律令を制定し、日本の国号が倭国から日本に変更された。奈良時代(710-794)には、元明天皇(661-721)が平城京に遷都して長安を模した政治都市を築き、天皇中心の中央集権国家を目指した。
花村嘉英(2018)「中国から日本に伝わったことばや文化について」より