『訳す』 中日翻訳の高速化-比較言語学からの考察3


3 中日翻訳の高速化-単文の場合

3.1 連動式述語文

 翻訳者としての実務経験からいうと、翻訳作業にはスピードが求められる。言い方はともかくとして、翻訳作業の究極の目標は、同時翻訳だと思う。無論、こうした言い方はない。しかし、限られた時間でデータをまとめる仕事であることに疑いはない。そこで目標を「中国語の語順のまま和訳する」ということにする。中国語の語順に沿って和訳すれば、訳抜けはなくなるし、同時翻訳といいたくなるのもわかるであろう。幾つかその例を見ていこう。
 二つ以上の動詞または動詞句が連用されて、意味上ある種の関係が保たれている構文のことを連動式の述語文という。(山本哲也 2002)

(4)王先生扳着手指计算今年的小麦产量。(王さんは指折りして、今年の小麦の出来高を見積もった。)(汉訳日精编教程)

 (4)の場合、左から右へ中国語の語順に従って、「・・して・・する」と和訳することができる。そして、連用される動詞の意味関係は、前の動詞が後の動詞の動作に関する方式や手段を表している。
意味関係として前の動詞が原因を表し、後の動詞が結果を表す場合もある。

(5)老赵得肺结核住了院。(趙さんは肺結核で入院した。)(汉訳日精编教程)

 但し、「有」がある場合には、後の動詞句が前の動詞の目的語を修飾するように訳すとよい。

(6)你有钱买房子吗?(君は家を買うお金があるの。)(汉訳日精编教程)

 つまり、目的語は「が」を用いて主語にして、「・・する・・がある」と訳せばよい。

花村嘉英(2017)「日本語教育のためのプログラム-中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで」より

日本語教育のためのプログラム


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