魯迅とカオス(阿Q正伝)2


 文学作品は一般的に時代とか社会生活を反映しており、描かれる社会生活には、作者の個性や感性を通した独特の趣がある。作者の思いは登場人物を形象化することにより表現され、それが読者に芸術的な感動を与える。(山本 2002)魯迅の生き写しである阿Qを追いながら、作品に見られる「馬々虎々」の様子を見ていこう。特に、阿Qが五感で捕らえた情報と意識や無意識との関連づけを入出力の対象にする。
 まず、阿Qの言語特性をまとめておこう。郑择魁(1978)は、「阿Q正伝」の言語特性として、①口語化(白話文)、②正確、鮮明で生き生きとした描写、③人物の高度な個性化、④中傷、ユーモア、婉曲表現、反語を挙げている。また、毛沢東も「阿Q正伝」が辛亥革命の失敗を反映しつつ、芸術の枠組みでこの革命の歴史的教訓を伝えていると述べている。

言語特性①
 具体例 毛沢東が「阿Q正伝」に言及したとき、通俗化と口語化を特に評価した。
言語特性②
 具体例 肃然(粛然とした)、赧然(恥ずかしそうな)、凛然(厳然とした)、悚然(怖がる)、欣然(喜び勇んだ)などの形容詞を用いて、民衆の表情を正確で生き生きとはっきり描いている。
言語特性③
 具体例 系図によると、阿Qは趙太爺の息子より三代上で、未荘村の地蔵堂に住む日雇い労働者である。辮髪は茶色だが、瘡禿げを気にしている。嗜好品は酒と煙草で、自尊心が強い。阿Qには勝利法があり、心の中で思っていることを後から口に出す。とりあえず都合よくものを考える。伝家の宝刀が忘却であるため、気分屋で、賭博のときは一番声が大きい。町へ行って金を稼いで戻ってきて、未荘村の人たちにその様子を語る。しかし、結局、町で盗みのプロに手を貸すコソ泥に過ぎなかったことがわかる。
言語特性④
 具体例  自覚の足りない阿Qのことを描きながら、彼を覚醒させようとする。風刺の裏に作者の情熱と希望が隠されている。男女の掟に厳格であり、元来、真面目な人間である。国家の興亡の責任は、男にあるとする。

花村嘉英(2015)「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品-魯迅をシナジーで読む」より

シナジーのメタファー2


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