三浦綾子の「道ありき」でうつ病から病跡学を考える1


1 先行研究

 三浦綾子(1922-1999)が自身の闘病生活を描いた「道ありき」は、24歳から37歳までの実生活を描いている。この小論は、「道ありき」に描かれた三浦綾子の病状からうつ病の様子を探ることにより、病跡学の分析を試みる。そもそも入試や育成に違いがあるため、人文と医学は、共生の組合せの中で最も成立しにくい組である。また、心理と医学の組でも行動様式とか臨床心理が主要の研究のため、執筆脳は、殆んど研究されていない。 

 病跡学の参考資料として日本病跡学会の論集59号を使用する。その中にあるマックス・ウェーバーのうつ病に関する論文(高橋2000)は、うつ病に対して患者や家族がどのように対処するのかについてうつ病者の行動や周囲の反応という観点から考察をしている。この小論も、うつ病者(作者)の発病による影響や虚無感、周囲の人たちの対応、そして婚約者との死別を乗り越え、綾子が三浦光世と人生を再スタートする回復の場面について作者の病を追跡しながら考察していく。 

 シナジーのメタファーの研究の流れを見ると、基本的に人文と自然科学の調節である。まず、人文と情報の計算文学が来て、次に人文と医学から病跡学の考察になる。その際、理工や医学の専門家による購読の研究と内包の違いを説明するために、まず認知の柱をスライドさせて医学と調節し、次にフォーマットのシフトによるLの考察を試みる。

 イメージでいうと、縦は比較とか照合を、横は異質の入出力を調節している。その際、人文と社会、人文と情報、文化と栄養、心理と医学といった組を作ることにより信号が横滑りする。信号の流れは、縦横共に分析、直感、エキスパートである。 

 こうした購読脳と執筆脳の相互関係から三浦綾子のシナジーのメタファーについて考える。先行研究の計算文学の分析では、作家が思考を繰り返す問題解決の場面が考察対象であった。しかし、病跡学の場合は、問題未解決の場面も含めたより多くの場面の考察が可能である。

花村嘉英「三浦綾子の「道ありき」でうつ病から病跡学を考える」中国日语教学研究会上海分会論文集 2021

シナジーのメタファー4


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