日本語から見た東アジアと欧米諸語の比較-言語類型論における普遍性を中心に5


2 融合度と総合度

 アメリカの言語学者サピア(1884-1937)は、上述の形態の分類を融合度と総合度という目安に変えて、世界の言語を分類している。筆者もこれらの指標を用いて日本語とドイツ語の分類を試みたことがある。(花村 2015)
 諸言語を分類するために、世界中の言語の文法過程を研究し続けたサピアは、言語概念を次の4つに分類した。(Ⅰ)根本概念、(Ⅱ)派生概念、(Ⅲ)具体的関係概念、(Ⅳ)純粋関係概念。
 表3の縦の分類は、概念を言語記号に移すことに関わる問題である。一つは、語幹概念を純粋なまま保持しているかどうか、また一つは、基本的な関係概念に具体概念が混ざるかどうかにより、純粋関係言語(A単純とB複雑)と混合関係言語(C単純とD複雑)を区別する。前者はAとC対BとD、後者はAとB対CとDになる。
 一方、横の分類で(Ⅱ)の派生概念は、語幹要素に非語幹要素を接辞して、語幹要素に特定の意義を添加する。例えば、英語のfarmerのerは、行為者を表す接尾辞のため、farmerという語は、特定の動詞の習慣的な主語になる。
(Ⅲ)の具体的関係概念も語幹要素に非語幹要素を接辞することで表現されるが、派生概念より隔たりが大きい。(例、booksのsやdepthのth)
(Ⅳ)の純粋関係概念は、命題中の具体的な要素を相互に関係づけて、明確な統語形式を与える。(例、数、性、格の照応)

花村嘉英(2018)「日本語から見た東アジアと欧米諸語の比較-言語類型論における普遍性を中心に」より

シナジーのメタファー2


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