HPSGから見たことばの呼応とその運用について-英語、ドイツ語、日本語、中国語を中心に6


1.3 限定詞と名詞の呼応

 名詞は限定詞を下位範疇化するため、NPの統語論と意味論の分析は名詞と限定詞間のインデックスの呼応を想定させる。everyのような量化の限定詞の場合は、限定詞により選択されたN’のCONTENT値〔INDEX|NUMBER plur〕が限定詞のCONTENTにあるRESTRICTED-INDEX値を指定するため単数名詞とのみ結合する。インデックスとアンカー上のNUMBERの指定間に制約を設けると、英語の場合は次のようになる。

(13)every man
(14)*every men
(15)*all man
(16)all men

 ここで、everyは非集合体の限定詞であり、allは集合体の限定詞となる。主語と動詞の呼応についても同じように考えることができる。

(17) Every student is/*are Chinese.
(18) All students *studies/study very hard.

一方、theとnoのような限定詞は、NUMBER値を指定しない。

(19) No/The teacher writes reports.
(20) No/The teachers work very hard.

 VPとNPの呼応の素性は英語の場合、語彙の主要部の素性と呼応する。これを処理するために、ここでは呼応の素性を主要部の素性(Head Feature Principle)とはせず、代わりに異なる原理を設定することにする。意味の原理は、呼応の素性が属する意味内容を共有するようにNPに要求するため、NPは主要部の呼応を一緒に使用することになる。しかし、英語の場合は、動詞や動詞句の呼応が主語に相応するSUBCATの要素のインデックスに係るため、この要素がVPとその語彙の主要部(下位範疇化原理)により全体で共有される。

花村嘉英(2018)「ことばの呼応とその運用を比較する-英語、ドイツ語、日本語、中国語を中心に」より

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