志賀直哉の「城の崎にて」で執筆脳を考える5

【連想分析1】

表2 受容と共生のイメージ合わせ
円山川で鼠が逃げ廻る場面
A 「一の湯」の前から小川は往来の真ん中をゆるやかに流れ、円山川へ入る。ある所まで来ると橋だの岸だのに人が立って何かのかわの中の物を見ながら騒いでいた。それは大きな鼠を川へ投げ込んだのを見ているのだ。鼠は一生懸命に泳いで逃げようとする。
意味1 1、意味2 1+2、意味3 1、意味4 2.健常脳 1
B 鼠には首の所に七寸ばかりの魚串が貫してあった。頭の上に三寸程、咽喉の下に三寸程それが出ている。鼠は石垣へ這い上がろうとする。子供がニ三人、四十位の車夫が一人、それへ石を投げる。却々当たらない。カチッカチッと石垣に当たって跳ね返った。
意味1 4、意味2 1+2、意味3 1、意味4 2.健常脳 1
C 見物人は大声で笑った。鼠は石垣の間にようやく前足をかけた。然し這入ろうとすると魚串が直ぐにつかえた。そして又水へ落ちる。鼠はどうかして助かろうとしている。顔の表情は人間にわからなかったが動作の表情に、それが一生懸命である事がよくわかった。
意味1 4、意味2 1、意味3 1、意味4 2.健常脳 1
D 鼠は何処かへ逃げこむことが出来れば助かると思っているように、長い串を刺されたまま又川の真ん中の方へ泳ぎ出た。子供や車夫は益々面白がって石を投げた。傍の洗場の前で餌を漁っていた二三羽の家鴨が石が飛んでくるのでびっくりし、首を伸ばしてきょろきょろとした。
意味1 1、意味2 1、意味3 1、意味4 2.健常脳 1
E スポッ、スポッと石が水へ投げ込まれた。家鴨は頓狂な顔をして首をのばしたまま、鳴きながら、忙しく足を動かして上流の方へ泳いでいった。自分は鼠の最期を見る気がしなかった。
意味1 3、意味2 1、意味3 1、意味4 1.健常脳 2

花村嘉英(2020)「志賀直哉の『城の崎にて』の執筆脳について」より

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