4 トーマス・マンの脳の活動はファジィ
トーマス・マンは、散文の条件として常に現実から距離を置く。一つには、現実をできるだけ正確に考察するために、また一つには、それを批判するために、つまり、イロニー的に。この批判的な距離は、イロニー的な距離となりうるだろう。実際、批判的な表現における簡潔さには、余すところなく正確に規定された概念言語の要求に対して、言語媒体そのものの特徴から反対の行動をとるある種の制限が設定されている。
ザデーはファジィを次のように定義する。正確さと複雑さは両立が困難である。システムの複雑さが増すと、その振舞いについて性格ではっきりとした主張は出来なくなってくる。例えば、現実の経済と関連したシステムの振舞いを推測することは、大変に難しい。
つまり、両者とも、物事を深く正確に突き止めていってもそこには限界があり、逆に深追いしないことにより、より良い結果をもたらすことができると主張している。トーマス・マンのイロニーとファジィ理論の整合性については、著作の中ですでに実証済みである。
花村嘉英(2017)「Thomas Mannの「魔の山」のデータベース化とその分析」より