HPSGから見たことばの呼応とその運用について-英語、ドイツ語、日本語、中国語を中心に4


1.2 動詞と引数の呼応

 言語が指示的な指標を指定する語彙の形式(例、動詞、形容詞、前置詞および限定詞)を持つ場合、こうした語彙の形式の屈折語尾の語形変化表は、異なる指標の呼応の条件を含むことになる。例えば、英語の人称と数に関する主語と動詞の呼応とか数に関する限定詞と名詞の呼応とかドイツ語の数と性に関する限定詞と名詞の呼応などが考えられる。
 特に、動詞が主語のNPのインデックスについて情報を指定するという立場を取ると、動詞形はこれらのインデックスと関連する特定の素性の指定に従って変化する。英語の主語と動詞の呼応とか世界の多くの言語に見られる直接及び間接目的語と動詞の呼応に関する論理的な根拠が得られるからである。この枠組みでは、三人称単数現在の英語の動詞形は(12)のように表すことができる。

(12)≪CATEGORY[HEAD[VFORM fin],SUBCAT〈NPnom①[3rd,sing]〉], CONTENT[RELATIONrun, RUNNER①]≫

 三人称単数の動詞とは、主語と関連する指標に三人称単数の呼応を割り当てることである。英語の呼応のための屈折とは、屈折語尾の語形変化表の中に動詞の屈折形態と主語への呼応素性の割り当てが見出せるということをいう。
英語の主語と動詞の呼応に関するその他の点は、動詞の主語のSUBCAT要素上のNUMBERの指定が主語の数の形態によって反映されることである。

花村嘉英(2018)「ことばの呼応とその運用を比較する-英語、ドイツ語、日本語、中国語を中心に」より

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