【連想分析1】
表2 受容と共生のイメージ合わせ
A 森がトランクをさげて、仲通リを駅の方に歩いていくと、おまつり気分の人なみがぞろぞろ西の方に流れていくのに出会った。森の顔を見おぼえている子供がいて、温泉が出たそうだよ、見に行かないの、と教えてくれた。意味1 1、意味2 1、意味3 2、意味4 1、人工知能 1
B まだ二十分ある、のぞくだけは、のぞいてみようかと、流れについてしばらく行くと、県道をこえた畠地のあたりかで、やがて大きな人垣にぶつかった。その向こうに、しろい上記の柱が、サーチライトの光に照らし出され、発狂した薄布の束のようになって、うなりながら見物人の上で渦まいているのが見えた。
意味1 1、意味2 4、意味3 2、意味4 1、人工知能 1
C 拍手がおこり、それから楽隊の演奏がはじまった。ふと後ろから、群衆をかきわける、警備員の声がする。こじ開けられた人垣のあいだを、かき分けてやってくるのは、なんと花束をかかえた振袖姿の藤野うるわしではないか。うるわしは、ちらっと森に無関心な視線を投げかけると、そのまま前をとおりすぎ、ゆうゆうと人垣の向こうに吸い込まれていってしまった。意味1 1+2、意味2 4、意味3 2、意味4 1、人工知能 1
D 森は思った。まったく、現実ほど、非現実なものはない。この町全体が、まさに一つの巨大な病棟だ。どうやら精神科の医者の出るまくなどなさそうである。われわれに残されている仕事と言えばせいぜいのところ、現実的な非現実を、かくまい保護してやるくらいのことではあるまいか。
意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 2、人工知能 1
E 森は人垣はなれて、歩き出した。しかし、駅の方にではなく、いまやって来た道を、もう一度診療所の方へ・・・新しい勤め先がきまるまで、どのみちたっぷり暇なのだ。傷だらけになった、飢餓同盟に、せめて包帯のサービスくらいはしてやるがいい。森ははじめて、自分が飢餓同盟員であったことを、すなおに認めたい気持ちになっていた。正気も、狂気も、いずれ魂の属性にしかすぎないのである。
意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能 2
花村嘉英(2020)「阿部公房の『飢餓同盟』の執筆脳について」より