5 DBの作成法と分析
DBの作成法について説明する。エクセルのデータについては、列の前半(文法1から意味5)が構文や意味の解析データ、後半(医学情報から人工知能)が理系に寄せる生成のデータである。一応、L(受容と共生)を反映している。DBの数字は、登場人物を動かしながら考えている。こうしたDBを作る場合、共生のカラムの設定が難しい。受容はそれぞれの言語ごとに構文と意味を解析し、何かの組を作ればよい。しかし、共生は作家の知的財産に基く脳の活動が問題になるため、作家ごとにカラムが変わる。執筆脳は、問題解決の場面で強くなる。(花村2015、花村2017)作成したDBの大きさは、およそ5000ラインである。
表1 魔の山のDBのカラム
項目名 内容 説明
文法1 量化 不定代名詞、相互代名詞。
文法2 態 能動、受動、使役。
文法3 時制、相 現在、過去、未来、進行形、完了形。
文法4 様相 可能、推量、必然、義務など。
文法5 イディオム 様相の拡大。
意味1 個性 若い、背が高い、我慢強いなど。
意味2 距離 現実的または心理的に近い、中位、遠い
意味3 五感 視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚
意味4 振舞い 振舞い
意味5 数字 いろいろな数字。
医学情報 サナトリウム 受容と共生の接点。構文や意味の解析から得た組「イロニーとファジィ」と病跡学でリンクを張るためにメディカル情報を入れる。
記憶 短期、作業記憶、長期(陳述と非陳述) 作品から読み取れる記憶を拾う。長期記憶は陳述と非陳述に分類される。
認知プロセス1 感覚情報の捉え方 感覚器官からの情報に注目するため、対象の捉え方が問題になる。例えば、ベースとプロファイルやグループ化または条件反射。
認知プロセス2 記憶と学習 外部からの情報を既存の知識構造に組み込む。その際、未知の情報についてはカテゴリー化する。学習につながるため。
認知プロセス3 計画、問題解決、推論 受け取った情報は、計画を立てるときにも役に立つ。目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。獲得した情報が完全でない場合、推論が必要になる。
人工知能1 ファジィ、ニューラル 「イロニーとファジィ」が入力で、「ファジィとニューラル」が出力となる。
人工知能2 エキスパート リスク回避を目的とした行動に注目する。
花村嘉英(2017)「Thomas Mannの「魔の山」のデータベース化と推定による分析」より