水上勉の「海の牙」で執筆脳を考える4


【連想分析1】

表2 受容と共生のイメージ合わせ

ウメコが奇病で悶絶する

A  ウメコはうす目をあけて手足を間断なくふるわせているばかりだった。ものが言えないのだ。「ウメコ、ウメコ、ウメコ・・・」母親は髪をふり乱し、汐焼けした手で少女の肩をしっかりつかんだ。はげしい痙攣がつたわってきた。やにわに母親は、うつ伏しているウメコを小脇に掻き抱いた。涎が長く糸をひき、母親の手に落ちかかった。 意味1 1+2、意味2 3、意味3 1、意味4 1、不可思議絡み 1

B 「ウメコ、ウメコ・・・」絶叫する母親の顔は涙で汚れ、まっ青にかわっていた。突然、彼女は少女を抱き上げながら崖に向かって走り出した。母親の膝がしらが紅い腰巻を割ってむき出しのまま遠ざかって行った。 意味1 1+2、意味2 3、意味3 1、意味4 1、不可思議絡み 1

C 「お父、お父・・・猫踊りにかかったと、お父」網小舎の中から父親が飛んできた。ウメコを抱き上げた。母親は敷居ぎわに手をつき、夫の足もとにしがみついて泣きくずれた。「おら、駐在へ行ってくっから」そういってウメコを家の中の筵の上に寝かせた。 
意味1 1+2、意味2 3、意味3 1、意味4 1、不可思議絡み 1

D その瞬間汚れた砂だらけの尻をまる出しにして筵の上にころげ廻った。やがてくるくると宙返りをはじめた。苦痛を訴える少女の目に、獣のような光が見えた。トタン屋根の暗い下から、村の静かな空気を引き裂くような母親の泣きわめく声がいつまでも響いていた。
意味1 1+2、意味2 3、意味3 1、意味4 1、不可思議絡み 1

E 九歳になるこの少女が、あとで「水潟奇病」といわれる原因不明の恐るべき第一号患者となった。ウメコは、発病して十五日目に水潟市立病院で死んだ。死ぬ間際に、この少女は看護婦の制止する手をはねのけ、体を宙に飛び跳ねたり、くるくると反転させたりしたのち、悶絶した。
意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、不可思議絡み 1

花村嘉英(2020)「水上勉の『海の牙』の購読脳について」より


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