ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える2


2 “Hunger”のLのストーリー 

 ドリス・レッシング(1919-2013)の“Hunger”「飢え」は、The Sun Between Their Feet: Collected African Stories, Vol. 2に収録されている小説で、部落出身のJabavuという黒人少年が白人の世界に現れ、そこでの経験を通して成長する物語である。主役の成長に焦点を当てているため、一種の発展小説といえる。
 レッシングは、1919年、イギリス人の両親のもとイランに生まれ、1925年父がトウモロコシや作物を作るために購入した南ローデシア(ジンバブエ)の地に移住した。少女時代は、ハラレにあるドミニクコンバート女学校で教育を受け、15歳で家を離れ南アフリカで看護婦として働いた。1937年に電話のオペレーターになり結婚する。二児をもうけるも1943年に離婚した。
 その後ロンドンに移住し、反核運動や反アパルトヘイトの活動に関与した。また、ハンガリーやアフガニスタンへのソビエトの進攻に反対し、ニューヨークタイムズに論説を発表した。創作活動については、1950年に「草は歌っている」でデビューし、50以上の小説を出版している。2007年にこれまでの最高齢になる88歳でノーベル文学賞を受賞した。1990年代後半は、脳卒中を患っていた。 
 Jabavuには3歳年上の姉がおり、彼女は、埃を吸って死んだ。Jabavu は、17歳になる部落出身の少年で飢餓状態にある。しかし、南にある大都会Johannesburgに憧れている。アフリカ人は、健康のために豆、野菜、肉そしてナッツを食べる。彼の母は、35歳にもならない若い女性である。(P.213) 
 誰かが戻ってくるあるいは村を通って通り過ぎると、Jabavuは、走って素晴らしい生活の話、冒険、興奮を聞きに行く。Pavuという仲間と一緒に街を目指す。街から送金できるため、両親は反対しない。Jabavuは、そう思っている。(P.227)Jabavuは、何も恐れていない。しかし、夜になっても街には着かない。空腹で飢えており胃もくたびれていて、足は、骨が内側で柔らかくなるかのように震えている。(P.236)

花村嘉英(2022)「ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える」より


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