三島由紀夫の「潮騒」で執筆脳を考える4


【連想分析1】

表2 受容と共生のイメージ合わせ
初江が鮑取り競争で勝利する

A 一時間がすぎると、舟は東からかえって来た。競争のためにいつもの十倍も疲れ果てた八人は、裸の上半身をもたせ合って黙って思い思いの方角に目をやっている。濡れて乱れた髪は、隣人の神と縺れ合って、見分けがつかない。意味1 1、意味2 3、意味3 2、意味4 1、人工知能 2

B 肌寒さに抱き合っている二人もある。乳房は鳥肌立ち、あまり日光が澄明なために、日灼けのしたそれらの裸体も、蒼褪めた溺死者の群れのように見えた。これを迎える磯の賑わいは、音もなくしずしずと進んでくる舟に、似つかわしくなかった。意味1 5、意味2 3、意味3 2、意味4 1、人工知能 2

C 舟を下りると、八人はすぐ焚火のまわりの砂に崩折れて、口もきかなかった。一人一人からうけとった桶を、行商がしらべて、大声で鮑の数を言った。「ニ十疋、初江さんが一番」「十八疋、久保さんが二番」一番と二番、初江と新治の母親は疲れて充血した目を見交わした。島でもっとも老連な海女がよその土地の海女に仕込まれた練達な少女に敗れたのである。意味1 1、意味2 1、意味3 2、意味4 1、人工知能 2

D 初江は黙って立って、商品をもらいに、岩かげへ行った。そしてもって来たのは、中年向の茶いろのハンドバッグである。少女は新治の母親の手にそれを押し付けた。母親の頬は歓びに血の気がさした。「どうして、わたに・・・」「お父さんがいつか、おばさんにすまんこと言うたから、あやまらんならんといつも思うとった」「えらい娘っ子や」と行商が叫んだ。意味1 5、意味2 4、意味3 2、意味4 1、人工知能 2

E みんなが口々にほめそやし、厚意をうけるように母親にすすめたので、彼女は茶いろのハンドバッグを丁寧に紙に包み、裸の小脇に抱えて、何の屈託もなく、「おおきに」と礼を言った。母親の率直な心は、少女の献上をまっすぐにうけとった。少女は微笑した。息子の嫁えらびは懸命だった、と母親は思った。--島の政治はいつもこうして行われるのだ。意味1 1、意味2 1、意味3 2、意味4 1、人工知能 2

花村嘉英(2020)「三島由紀夫の「潮騒」の執筆脳について」より


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