モンタギュー文法からGPSGへ-イディオムの構成性をめぐるモデル理論の修正17


4.2 モデル理論の修正

 GPSGが採用しているPTQのモデルの定義とは、基本表現に対して次の形式で指示対象を当てていく。あるタイプの可能な指示対象の集合として、De、Dt、D(a, b) 、D(s, a) がある。*

(23)
M=<A, I, J,≦,F>およびg。
1 A, I, Jは、それぞれ空でない個体、可能世界、時点の集合。
2 ≦は、Jに関する線形順序。
3 Fは、ILのすべての定項を定義域とする関数。
4 a∈Type、α∈Conaならば、F(a) ∈S a。
5 gは、ILのすべての変項の集合を定義域とする関数。
6 uがタイプaの変項であるとg(u) ∈D a。  

 ここで、Fは、aタイプの定項(Con aは、ILのaタイプの定項の集合)に対してその内包としてS aの要素を当て、gは、aタイプの変項に対してその指示対象D aの要素を当てる。しかし、(22)の2種のspielenの内包表現にこの方式を当てた場合、指標の指定に問題が生じる。spielen‘とspielen‘‘は、それそれ<NP, VP>タイプの抵抗ゆえにそれらの外延は、指標に依存することになる。(23)4 αM, i, j, g=F(α)。ここでαは、spielen‘またはspielen‘‘。Mは、上記モデル、iは、i∈I、jは、j∈Jである。または、これらがNPタイプを項とし、VPタイプの複合表現を生むことから関数適用規則が使われる。α(β)M, i, j, g=αM, i, j, g(βM, i, j, g)。ここで、βは、die-erste-Geige‘またはdie-erste-Geige‘‘である。この際、spielen‘‘がその項としてdie-erste-Geigeだけを選択する点が説明できない。この点をThomason(1972)に従って修正してみよう。

花村嘉英(2022)「モンタギュー文法からGPSGへ-イディオムの構成性をめぐるモデル理論の修正」より


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