幸田文の「父」の執筆脳について-臨終4


【連想分析1】
表2 受容と共生のイメージ合わせ

A 「こわかないですよ。あれが痙攣てものなんです。」小林さんは微笑して私をほごそうとしている。「だって私あの顔こわい。」「あなたがこわいくらいな先生の顔なら、なるべく誰にも見せない方がいいんじゃないですか。」 意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能1

B 私はぐっとつまった。十五分して又発作があった。顔は右が余計ひきつれてゆがんだ。それはおばあさん、父の母の晩年の顔そっくりだった。もう怖くもなんともなかった。また十五分して発作があった。
意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能1

C 三十日朝、柳田泉さんが来た。ついで武見さんが来た。先生が見ていてくれるところで安心して父の甲虫を掃除したかった。しろうとのそんなことが一気に死の直原因になってはと恐れて、し得なくていたのだった。 意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能2

D 「おとうさん、先生が見ていらしてくださるうちに綾子がお口を洗ってあげましょう。それでないと心配ですからね。さ、綺麗なお水をあがってくだあい。」割箸のさきに脱脂綿をつけ氷の水を含ませた。ごくりと喉仏が動いて通って行った。診察を済ませ、先生は小林さんやほかの人との話をしてい、私も送り出ていた。
意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能2

E 「色が変わった!」柳田さんの声だった。たちまち強いろが顔から奪って行った。武見さんが調音器をあてたまま、ややしばらく、「そう、心臓がとまりました」と云った。父は死んで、終わった。
意味1 1+2、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能1

花村嘉英(2020)「幸田文の『父』の執筆脳について」より


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