中島敦の「山月記」で執筆脳を考える-パーソナリティ障害3


2 「山月記」の思考によるLのストーリー

中島敦(1909-1942)は、1942年持病の喘息を抱えながら「山月記」を書き、同年この病が悪化しため、12月4日に33歳で死去する。「山月記」を読めば、誰もが人の人生について思わず考えさせられる。内容は、一連の精神活動の中で思考とつながるため、今回は「中島敦と思考」という組み合わせでシナジーのメタファーについて考察する。
 「山月記」の購読脳を「自尊心と自己愛性パーソナリティ障害」とする。自尊心については、主人公の李徴が認めている。日本成人病予防協会(2014)によると、人から称賛されたいと強く思い、根拠もないのに自分は称賛に値する優れた人間だと信じている。特権意識の強い、己惚れた人間である。自己愛を傷つけられると怒ることもある。この群に属するパーソナリティ障害には、反社会性、境界性、演技性といった基本的な特徴があり、他人を巻き込み派手で劇的な人格が見受けられる。
 購読脳の組み合せ、「自尊心と自己愛性パーソナリティ障害」という出力が、共生の読みの入力となって横にスライドし、出力として「人生と思考」という組を考える。よって「中島敦と思考」というシナジーのメタファーが成立する。
リスク回避と取れる提言が述べられる。己惚れることなく協調性を持って生活することが人生の心得なのである。なお、パーソナリティ障害は、一般的に病気に対する自身の認識が低いため、治療に至らないことが多い。できるだけ周囲の人を通して調節するとよい。

花村嘉英(2019)「中島敦の『山月記』の購読脳について」より

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