この階層は、生物の進化の過程と関連があり、下等な動物ほど下層の記憶が発達していて、高等な動物ほど上層の記憶が発達している。これは、人の成長の過程にも当てはまる。子供から大人になるにつれて、最初に手続き記憶が発達して、成長するに従って記憶の階層を昇順していく。例えば、3歳ぐらいの記憶がないという現象(幼児期健忘)は、エピソード記憶の発達が遅れているためである。10歳ぐらいまでは、意味記憶が発達していて、その後、エピソード記憶が優勢になる。逆に年をとると忘れっぽくなるが、これは、エピソード記憶が衰えるためである(例、痴呆症)。
しかし、記憶が階層をなしているということは、それぞれの記憶のメカニズムに違いがあることになる。一般的に、エピソード記憶や意味記憶は海馬と関わっていて、海馬は五感から情報を統合し、経験という記憶(エピソード記憶)を作る。記憶は一ヶ月ほど海馬に留まり、その後、側頭葉に移って保存される。
一方、短期記憶とプライミング記憶は大脳皮質で作られ、手続き記憶は線条体(大脳皮質の裏にある基底核)や小脳で作られる。
花村嘉英(2015)「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品-魯迅をシナジーで読む」より