4 データベースからの分析
データベースの作成法について説明する。エクセルのデータについては、列の前半(文法1から意味5)が構文や意味の解析データ、後半(医学情報から人工知能)が理系に寄せる生成のデータである。一応、L(受容と共生)を反映している。データベースの数字は、登場人物を動かしながら考えている。
こうしたデータベースを作る場合、共生のカラムの設定が難しい。受容は、それぞれの言語ごとに構文と意味を解析し、何かの組を作ればよい。しかし、共生は、作家の知的財産に基づいた脳の活動が問題になるため、作家ごとにカラムが変わる。因みにここでは森鴎外の「山椒大夫」の分析に近い方法を試みる。(花村2017)
【データベースの作成】
表2 「道ありき」のデータベースのカラム
項目名 | 内容 | 説明 |
文法1 | 名詞の格 | 三浦綾子の助詞の使い方を考える。 |
文法2 | 態 | 能動、受動、使役。 |
文法3 | 時制、相 | 現在、過去、未来、進行形、完了形。 |
文法4 | 様相 | 可能、推量、義務、必然。 |
意味1 | 五感 | 視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚。 |
意味2 | 喜怒哀楽 | 感情との接点。 |
意味3 | 思考の流れ | 虚無がある、なし。 |
意味4 | 振舞い | ジェスチャー、身振り。直示と隠喩を考える。 |
医学情報 | 三浦綾子との接点 | 受容と共生の接点。構文や意味の解析から得た組「虚無と愛情」と病跡学でリンクを張るためにメディカル情報を入れる。 |
情報の 認知1 | 感覚情報の捉え方 | 感覚器官からの情報に注目するため、対象の捉え方が問題になる。 |
情報の 認知2 | 記憶と学習 | 外部からの情報を既存の知識構造に組み込む。未知の情報については、学習につながるためカテゴリー化する。記憶の型として、短期、作業記憶、長期(陳述と非陳述)を考える。 |
情報の 認知3 | 計画、問題解決、 推論 | 受け取った情報は、計画を立てるときにも役に立つ。目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。獲得した情報が完全でない場合、推論が必要になる。 |
疾病脳 | 虚無でうつ | 何もなく虚しい心境。空虚であり自己も否定する。抑うつ感、不安感、思考や意欲に障害が出る。気分障害。 |
健常脳 | うつから回復 | 気分障害からの回復。 |
花村嘉英「三浦綾子の「道ありき」でうつ病から病跡学を考える」中国日语教学研究会上海分会論文集 2021