日本語から見た東アジアと欧米諸語の比較-言語類型論における普遍性を中心に11


 上述の日本語の名詞の格についてまとめると次のようになる。

表4
日本語の助詞 説明
が ①名詞に付いて主格を表す。「が」のおかげで名詞は主語になる。日本語が属性表示言語である一例で、韓国語やビルマ語にもある。②テーマとレーマの公式のうち、初めて名詞が出てきたときは「が」を使って新情報の内容を提示する。また、こうした「が」は強く発音される。
は ①「が」と同様に、名詞に付いて主格を表し、その時その時の話題や主題を表す。②テーマとレーマの公式のうち、既知の内容が話題になるという意味で「は」を使う。
を ①名詞に付いて対格を表す。②動詞句「弁当を持参する」の格助詞「を」が表示マーカーになり、「弁当を」という対格の項による従属部表示が見て取れる。
の ①所有格 ②主格の「が」とか対格の「を」の代わりにも使われる。

 また、日本語の助詞に当たる他言語の表現もまとめておく。

表5
他言語の表示マーカー 説明
中国語の動詞+主語 「が」格を表し、テーマ・レーマの公式では新情報を表す。
中国語の前置詞「把」 対格の「を」にあたる。
中国語の的 所有格の「の」にあたるが、使用されないこともある。
韓国語の이/가と은/는 이/가は「が」で、은/는は「は」にあたる。それぞれ前者はパッチムあり、後者はパッチムなし。
韓国語の을/를 目的格の「を」にあたる。

花村嘉英(2018)「日本語から見た東アジアと欧米諸語の比較-言語類型論における普遍性を中心に」より

シナジーのメタファー3


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