人文科学から始める技術文の翻訳15


3 特許文

3.1 翻訳技法

 2005年6月、日本の政府が管理する知的財産戦略本部は、「知的財産戦略計画2005」をまとめた。ここでは特に日米欧の特許相互認証について考えてみる。この取り組みの目標は世界特許システムの構築である。毎年、国内及び海外に同時に出願する企業が増えている。その折、手続きや費用の負担や審査の複雑さや遅延が問題になる。そのため世界共通の基盤となる特許システムを構築し、手続きの合理化や審査の相違及び重複を少なくすることが、特許制度を利用する側と運営する側との共通の利点になる。
 日米欧の特許システムとは、日本、米国及び欧州が相互に承認する仕組みである。日米欧の企業による技術開発や実務レベルはほぼ同レベルにあるため、他国における特許審査を活用することを目的とし、さらに特許権の付与については従来通り各国の特許庁がするため、属地的ではなくなる。(3)
 米国と日本の特許明細書は、記載項目についてほぼ対応している。しかし、項目が記載される順番が異なる。翻訳の際には、記載順序についても変更する必要がある。ここでは特にクレームの書き方について説明する。クレームは独占的な権利を得るべき発明技術の範囲を文字通り表現しており、先行技術に触れることなくできるだけ範囲を広げて記載し、不明確でなく複数の解釈ができないように一語一語厳選するため、この部分の翻訳は難しいとされる。

【英文】
(1)An information apparatus according to Claim 1, wherein the power of said recording light source is controlled by a control unit in accordance with the type of said recording medium.(知財翻訳研究所編1999)

①用語
ここでは、in accordance with(~に応じて)、according to Claim 1, wherein(~を特徴とする請求項1に記載の)を挙げておく。

②構文
 この文章は、wherein以下が従属文となって、クレームの内容を説明している。

③考察 表8
2段階の処理法 特許文の場合、according to Claim 1, whereinが「~を特徴とする請求項1に記載の~」という定訳になる。
態の用法 英文の受動態はそのまま受動態に和訳する。
否定構文 なし
時制 現在形

【和訳】
(2)記録媒体の種類に応じて記録光源の出力が制御装置によって制御されることを特徴とする請求項1に記載の情報記録装置。

花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より

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