人文科学から始める技術文の翻訳4


 日本語からそのまま英語の表現が思いつく場合もあるが、双方の発想の違いがつかめないと思い浮かばないこともある。日本語の「~して~する」という表現は、結果の表現と見なすこともできるし、何かの後にという意味にも取ることができる。

(3)ノブを右に回して設定温度を下げてください。

(4)カバーを外して電池を交換してください。

(3)は、ノブを回した結果、設定温度が下がるとして、(5)のような結果を表すto不定詞の構文にする。また(4)は、カバーを外してから電池を外すという意味に取れる。そのため、(6)のようにandでつなげばよい。

(5)Rotate the knob clockwise to lower the set temperature. (技術英語構文辞典)

(6)Remove the cover and replace the battery.

関係代名詞を用いて結果を表す場合もある。これは前文を先行詞として取り、これが原因でその結果が関係代名詞により表現されるとする。

(7)カメラのシャッターボタンを押すと、スプリングがリングを動かして、ブレードを開く。

(7)の最後の部分が問題になる。それより前の部分は先行詞として主語となり、最後の部分が結果として表される。

(8)When the shutter release of the camera is pressed, a spring moves the ring, which in turn opens the blade.(技術英語構文辞典)

(8)の後半部は、上述のto不定詞や分詞構文でも書くことができる。

(9)When the shutter release of the camera is pressed, a spring moves the ring to open the blade.

(10)When the shutter release of the camera is pressed, a spring moves the ring opening the blade.

 (8)、(9)、(10)は、いずれも二つの因果関係を一つの文で記している。これらの二つの因果関係は、二つの文で表記することもできる。前文をThisで受けて、新規で文を作ればよい。

(11)When the shutter release of the camera is pressed, a spring moves the ring. This opens the blade.

花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より

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