川端康成の「雪国」から見えてくるシナジーのメタファーとは-「無と創造」から「目的達成型の認知発達」へ3


3 共生の読み

 「無と創造」という購読脳の出力は、情報の認知のための入力となって横にスライドしていく。このプロセスでは、非専門の系列(社会、情報、バイオ、メディカル)がブラックボックスにならないように、実務や資格などで実績を調節していく必要がある。(花村2015、2017)確かに文化科学や社会科学には、文化と栄養や法律とエネルギーなどLの研究フォーマットが存在する。しかし、人文科学には存在しない。あるいはなくてもよい。
 そもそも存在しないことについて考える場合でも、解を出せる分析法があれば、それは存在してもいいはずである。そこで、縦軸を言語の認知とし、その出力が入力となり、共生の読みのために横に滑って情報の認知を経てLの出力が出るフォーマットを考える。このLのモデルは、購読脳と執筆脳をマージするときに役に立つ。作家が執筆中に伝えようと思っていたことが理解できるのは、ことばの理解のみならず購読脳が執筆脳に近づいて行くためである。
 縦の柱の研究フォーマットであれば、Tの逆さの認知の定規をスライドさせながら、人文や文化の柱とその他の副専攻の柱を調節するだけである。
 共生の読みのゴールは、「無と創造」という購読脳の出力が入力となり、リレーショナルなデータベースを作成しながら、一文一文をLに読むと次第に見えてくる。人工知能の世界でいう何がしとか健常者の脳の活動でいう何がしということがつかめればよい。イメージとして、まだ知識のない人工知能が特定の目的を意識して次第に育っていく感じがよい。そう考えると、人間に見たてて川端と組みが作れそうである。
 なお、小説のデータベースは、既存の文学分析や様々な理系の研究と照合ができる文理のリレーショナルな研究ツールであり、コーパス、パーザー、翻訳メモリーさらには計量言語学と並んで、人文科学の人たちが取り組むべき人文と情報の組み合わせである。

花村嘉英( 2018)「川端康成の『雪国』から見えてくるシナジーのメタファーとは」より

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