2.4 anfangen、beginnen、aufhören
2.1の最後にEngel(1976)の上記3動詞に関する識別方法では不十分であるとし、その理由を例文(20)においてすら「あるプロセスの始まり」を表す場合があるとした。
(20)の文が表すこうした意味上の曖昧性を説明するために、ラインヴァインの提示した概念、主語内的、主語外的を借用すると、(20)の文が「意図」をともなう場合は、様相因子が主語内的になり、「あるプロセスの始まり」を示す場合は、様相因子が主語外的になる。このことをまとめと、次のようになる。
Normativergänzung 意味 様相因子
様相動詞 +Anim Abst(als Hum) 意図 主語内的
本動詞 Abst(als Hum) -Anim、Abst プロセス開始 主語外的
ここで、<+ Anim、Abst(als Hum)、-Anim、Abst>は、Helbig und Schenkel(1969)の用語である。尚、Helbig und Schenkel(1969)について一言述べると、anfangen、beginnen、aufhören(aufhörenの記載は実際にない)の項で、zu不定詞句とdaß文が相応して書き換えが可能とされている点は適切ではない。なぜなら、先に特性Cに関して記したように、主語同定の関係にある場合、従属文には、主にzu不定詞句が現れ、daß文がそれと同レベルで下位構造になることは、とりわけ実用的なレベルではないからである。
Anfangenに関する表2は、beginnenやaufhörenについても該当する。但し、Normativergänzungに現れる特性には違いが見られる。(Helbig und Schenkel 1969)。
最後に問題となるのは、様相因子の動き具合である。先の図からでは、この点が説明されない。そこで、言語を統語上も意味上も曖昧性なく記していく、モンタギュー流の手法により、さらに検討してみることにする。
花村嘉英(2020)「Anfangen、beginnen、aufhörenにおける様相因子の動きから生まれる文の曖昧性-モンタギュー文法による形式意味論からの考察」より