2 zu不定詞句を従える様相動詞
この章では、zu不定詞句を従える様相動詞のうち、anfangen、beginnen、aufhörenには、他と異なる統語論上、意味上論の特性があることを示す。同時に、上記3つの動詞がともなう主格補足後に様相因子が含まれているか否かにより生じる文の曖昧性を指摘する。
2.1 統語論
zu不定詞句を従える様相動詞の統語論上の定義は、とりわけEngelen(1975)、Engel(1976、1977)、Neugeborn(1976)に見られる。それらに基づくならば、この動詞群の統語特性は、次の通りである。
A zu不定詞句を支配する。
B E0(Normativergänzung)は、不定詞に依存し、定動詞には支配されない(Subjektidentisch)。即ち、様相動詞が省略されても。その文構造は変わらない。
(4)Heinrich A pflegt M den Wecker B aufs Klavier C zu stellen V. (Neugeborn)
M → V → A、B、C
(4)’ Heinrich A stellt V den Wecker B aufs Klavier C.
V → A、B、C
C zu不定詞句の照応化も書き換えも不可。
(5)Das Wetter verspricht, schön zu werden.
(5)’ ※Das Wetter verspricht es/das.
花村嘉英(2020)「Anfangen、beginnen、aufhörenにおける様相因子の動きから生まれる文の曖昧性-モンタギュー文法による形式意味論からの考察」より