Anfangen、beginnen、aufhörenにおける様相因子の動きから生まれる文の曖昧性-モンタギュー文法による形式意味論からの考察7


1.3 ドイツ語の統語規則及び翻訳規則

 Löbner(1976)は、20通りの統語規則を提示している。PTQにおけるS1(語彙装入規則)を削除する代わりに、論理的な分析が可能な語彙には、基本翻訳規則(Basisübersetzung:以下ÜBと略記)が設定されている。尚、統語規則(R)と翻訳規則(ÜR)とを便宜上並行して示す。しかし、必要に応じて用いる例文は、上記基本表現から構成されたものである。本稿の性質からして、例文は、動詞の範疇(VTr、VnTr、Vsatz、TrVv)に関連している。 
 また、その派生過程を示す分析樹は、分析樹の代わりに派生過程の連鎖がカッコで表示されている(Löbner 1976)。例えば、Heinrich(sagen(Melanie(erwarten(kein(Geld)))))。これは、従来の句構造標識(P-marker)とは異なり、自然言語(即ち表層)に見られる構造上、意味上の曖昧性を取り去る働きをする。 
 UGの規定に従えば、分析樹の表示は、L=<DL、R>におけるDLに対応している。ここで、Lは自然言語、DLは曖昧性のない言語、Rは両者を取り持つ関数である。そのため、統語規則の番号が付与されている。 
 統語規則R1からR8に対応する統語操作は、σ0(x, y)=df「x(y)」である。こうして翻訳される有意表現が、ILの意味規則により解釈され、その指示対象を得る。

花村嘉英(2020)「Anfangen、beginnen、aufhörenにおける様相因子の動きから生まれる文の曖昧性-モンタギュー文法による形式意味論からの考察」より

シナジーのメタファー1


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