1.1 ドイツ語の範疇及び基本表現
範疇とはAjdukiewiczの範疇文法が基礎になっている。Lewis(1972)に基づき簡単に記すならば、範疇文法とは、以下のような文脈自由の句構造文法である。基本カテゴリー(S、N、C、・・・)の組み合わせにより複合カテゴリーが定義される。(C/C1・・・)。これらが品詞に対応する。そして、複合カテゴリーは、同時に構文的な結合関係も表し、それぞれが語彙目録を携えているのである。これらの手掛かりとして Löbner(1976)にある範疇や基本表現を見てみよう。
範疇の定義 範疇 通常の表現 基本表現
t Satz 文 -
e]t Substanz 普通名詞 Mensch, Student, Vegetarier, Zwerg
e]t]]e]t]]t Art 冠詞類 Jeder,ein,kein,der
e]t]]t N 固有名詞、代名詞 Heinrich,Stefanie,er0,er1
e]t V 自動詞 frieren,husten,lächeln,seufzen
e]t]]e]t Adv 述語修飾の副詞 sehr,gerade
e]t]]t]]]e]t TrVn 他動詞 finden,sehen,suchen,beobachten
t]e]t TrVsatz 補文を取る他動詞 sagen,verrate,behaupten
t]e]t TrVv Zu不定詞の他動詞 beginnen,wagen,versuchen,pflegen
e]t]]t]]]e]r]]e]t]] Präp 前置詞 trotz,wegen
t]t AdSatz 文修飾の副詞 notwendig,wahrscheinlich,sicher
範疇の定義におけるeは固体、tは文の範疇である。PTQに比して、範疇Artが設けられている。この措置は、範疇Artの複合表現(ein jeder)がドイツ語にみられることを考えれば妥当なものといえよう。
花村嘉英(2020)「Anfangen、beginnen、aufhörenにおける様相因子の動きから生まれる文の曖昧性-モンタギュー文法による形式意味論からの考察」より