中国人の学生に日本語の読み書きを教授する ―要約文の作成について

3 要約の準備
 新聞記事を例にして要約の方法を説明していく。天津で担当した新聞講読や日本語の作文のクラスでは、特に学期の後半に要約のトレーニングを試みた。日本語学習歴が2、3年ということもあり、新聞記事を使えば、一般的な知識もさることながら日本の事情にも通じるようになる。文章を処理する際の作業単位は、先にも述べた通り段落がよい。 
 新聞記事の形式段落は、通常3つ4つの文からなっている。よい段落の条件とは、①長さを工夫する、②段落内の文を結びつける語句が正しく使用されている(例、接続語、指示語、テーマ・レーマ)、③全体の文章と段落に何らかの関係がある、④中心文があることである(王/山鹿:2004)。新聞記者も当然こうしたことを念頭に入れて記事を書いている。また、段落の変わり目の目安として、①時間や場所が変わる。②人物や事件が変わる、③立場や観点が変わる、④会話文の話し手が変わる、⑤事柄や考えが変わるときが考えられる。(王/山鹿:2004)
 そこで、段落の中からキーワードやそれを含む中心文を探して、各段の要約文をまとめながら、最後に全体の要約文に仕上げる練習を繰り返す。字数制限についてはどうだろうか。この場合、各段落を要約してから複数をまとめて意味段落にする。そして、2つ3つの意味段落をまとめて、字数の範囲内で要約文を完成させる。その際にも一応5W1Hを使って整える。(4 要約の実践を参照すること)
 どのことばについてもこうした方法で要約文を作ることができる。しかし、繰り返してトレーニングをしないと、限られた時間でデータをまとめることはできない。一学期ぐらいは我慢してトレーニングを続ければ、要約作業のコツもつかめてくる。 
花村嘉英「日本語教育のためのプログラム」より

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